すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

特捜部Q ーアサドの祈りー/Offer 2117  (ねこ4.2匹)

ユッシ・エーズラ・オールスン著。吉田奈保子訳。ハヤカワ文庫。

キプロスの浜辺に、難民とおぼしき老女の遺体が打ち上げられた。新聞で「犠牲者2117」として紹介された彼女の写真を見たアサドは慟哭し、ついに自らの凄絶な過去を特捜部Qのメンバーに打ち明ける。彼女は、彼が生き別れた最愛の家族とつながりを持つ人物だった。一方、Qには謎の男から殺人予告の電話がかかってきた。Qの面々は男が凶行にいたる前にその所在をつきとめられるのか? 北欧警察小説の最高傑作シリーズ!(上巻裏表紙引用)
 
特捜部Qシリーズ、待望の第8弾。
アサドの大ファンのわたくしとしましては、アサドの過去が分かるというアサドメインの事件をそれはそれは楽しみにしておりました。でもちょっと、アレだな~、壮絶すぎたな。。。何かある、とは思っていたけれど、本名じゃないこともシリア人ではないことも予想はしていたけれど。奥さんと2人の娘が16年間もテロリストに監禁されているなんて、それも自分のせいで。これはもういくら助けられたからって良かったねハッピーエンドだねとはならないのでは。。というぐらい酷い。ギリシャの新聞記者ジュアンの視点も彼自身が誘拐されることによってこれまた読んでいられないくらい悲惨だし。さらに今回は、無差別殺人を目論み家族を惨殺するニートが絡んでくるものだからもうどこで息抜きしていいのやらわからない。このシリーズって、時々クスっと笑えたり特捜部Qの面々(カール、アサド、ローセ)の関係性がなごむところが魅力なんだけどな。。あまりにもアサドの内容が酷いので、とてもじゃないけどそんな雰囲気じゃなかった。ローセの復帰は嬉しいけど、嬉しいけども、アサドとあんなことになっちゃダメでしょ~~~~。。。
 
まあ、なんだかんだ現時点でのベストの状態になったのは良かったけど。アサドに笑顔が戻る日は来るのだろうか。。もう今までみたいな目で見れないや。

クジラアタマの王様  (ねこ4.2匹)

伊坂幸太郎著。新潮文庫

記憶の片隅に残る、しかし、覚えていない「夢」。自分は何かと戦っている? ――製菓会社の広報部署で働く岸は、商品への異物混入問い合わせを先輩から引き継いだことを皮切りに様々なトラブルに見舞われる。悪意、非難、罵倒。感情をぶつけられ、疲れ果てる岸だったが、とある議員の登場で状況が変わる。そして、そこには思いもよらぬ「繋がり」があり……。伊坂マジック、鮮やかなる新境地。(裏表紙引用)
 
伊坂さんの文庫新刊。
 
製菓会社に勤める岸、都議会議員池野内、人気ダンスグループメンバー小沢ヒジリの三人は、共通の夢で戦っていた。夢での戦いに勝つと、現実の出来事がうまくいくのだ。そして現実で出会い情報を提供し合う三人はさまざまなトラブルに巻き込まれ…。
 
過剰過ぎるネットやマスコミの批判をかつていじめられていた自分と重ね合わせ、世間をパニックにさせたパンデミックさえも「現実の世界で撃退」する岸の姿に感動した。話の通じない会社の老害たちの登場には胸かきむしられる思いだったが、悪人を必ず成敗させる伊坂作品らしく痛快な最後。池野内議員は全国に愛人がいたり法を犯したりするけど、なんだかんだ行動力もリーダーシップもあって引き込まれる人物だったな。小沢ヒジリは一貫していいやつ。サーカスで脱走したクマやらトラやらと対決するシーンは手に汗握ったねえ。10年前の火災やら、販促グッズとか、出てきたものが全部最後に繋がるのもすごい。これがコロナ前に書いたものだというのが驚愕。重なり合うところも多くて、知らなかったら絶対これはコロナ禍に書いたものだと思っちゃう。
 
ところで、たくさんの挿絵たちが印象的だったな。ハシビロコウ迫力(結局敵だったの?)

短篇七芒星  (ねこ4匹)

舞城王太郎著。講談社

遠くで小さく光るあの七つ星は世界が爆発して出来た超新星。 ドカンって音は、読み終わるころにやってくる。 言葉が並んで爆発した星を、七つ並べてもっかいドカン!(紹介文引用)
 
舞城さんの新刊。「短篇五芒星」に続く、七篇収録の短篇集。「五」はとても好きな作品なので、期待して読んだ。とにかく文体と同じく勢いにまかせ読むのもグワーっと。
 
「奏雨」
連続足切り殺人事件を追う刑事と、友人の探偵奏雨(ソウ)。ソウという名前が色々結び付けられて言葉遊びのようになってる。映画「ソウ」の考察が象徴的。これだけのショートストーリーで2人のキャラクターが明確になっているのすごい。
 
「狙撃」
狙撃手マークスマンの撃った弾丸は、はるか遠い異国の悪人たちの心臓の中にくい込む。舞城世界ならでは。未来の結末さえも踏まえて主人公の運命が翻弄されるさまが描かれる。
 
「落下」
マンションに引っ越して来た4人家族。その日に起きた飛び降り事件、そして毎晩聞こえてくる落下音。マンションをめぐるある出来事を、頼りない父親が解き明かす。ってなぜ子どもに丁寧語。。こういう発想が舞城さんのおもろいところ。
 
「雷撃」
悪いやつらに報復する、人間の心を持った石を育てる少年は、クラスメイトのシービーとの交流を経て様々な疑問と葛藤が。石と少女との三角関係?この石を持っていて本人に禍はなさそうだけど、普通には生きられないよね。それに気づかせてくれたのかな。
 
「代替」
生まれながらの極悪人の<視点>が語る二人称小説。本人と入れ替わってから人格まで変わってしまった男の運命は。これもある意味友情なのか。ちょっとハードボイルドな作風。
 
「春嵐」
兄の彼女の弟が拉致されてさあ大変。飼い犬ストームをけしかけて、いいところを見せようとする兄だが…。クモ膜下出血だの肺が半分だの、死にかけてるのにこのノリはなに。。何か知らない感情に目覚めた妹といい、愛のカオス。
 
「縁起」
3歳の娘が、母親の子宮にいる豚に弟が捕まったと話し出す。子どもの作り話、妄想だと微笑ましく聞いていた父親と真に受けて人が変わったようになる母親。いつもの噛み合わない感じが舞城作品らしくてテンション上がる。噛み合わないままじゃなくて、なんだかハッピー展開になるあたりいいな。
 
以上。
訳のわからないいつもの舞城ワールドがハイスピードで七本分。じっくり丁寧に読むなんて出来やしない。理解のしやすさは「五」、ハチャメチャさは「七」かな。「五」のほうがぶん回された気がするけど、ノリの良さと面白さは相変わらず。

宮古島旅行記・後編 ~海・魚・船・森・肉~

<7月6日 晴れ>

さてさて旅行3日目~となる後編は、いよいよ宮古ブルーにざぶん!シュノーケル&クリアカヤックに挑戦。

 

最初に向かった近くのシギラビーチはカバナテントが借りられなかったので、スタッフさんにオススメしてもらった新城(あらぐすく)海岸へ車で向かいました。遅れを取ってしまったので、(10:00)駐車場は激混み!親切な方がいて、なんとかなりました。でもシギラビーチで100均で買ったサングラス落としてしまった。。ショック。

 

この辺にウミガメ、あのあたりにニモ(カクレクマノミ)、などバイトの宮古島ボーイがパラソルまで案内しつつ教えてくれます。シュノーケルと言っても本格的なものではなく、絶対足のつくところでかる~くやりました。怖いのでね^^;青や黄色、黒や白のお魚が見れました。まあやると思ってましたが海水飲んじゃいました…。あとは浮き輪でぷかぷか浮かんだりして過ごしました。至福。

 

サンダルは砂だらけ、着替えは車の中となかなか野性味あふれる経験。リア充って陰ではつくづく大変なのだな。。

 

お昼は軽くカレーなどをいただき、疲れたので14:00頃引き上げました。喉が渇いたのでこれまた有名なカフェ「とぅんからや」へ。ドラゴンフルーツかき氷と黒糖アイス&サタバンピン(サータアンダギーをここではそう呼ぶそうな)。絶対またここに来たいと思うぐらい美味しくて、特に黒糖アイスが絶品。でも暑すぎて、5分でジュースになっちゃいましたが。。。

 

そして今日明日と泊まるインギャーコーラルヴィレッジへ。コテージタイプってテンション上がりますよね。ジャグジーもロフトもある~♫

お部屋があまりにも楽しくて、夕食は屋台村でテイクアウト。

宮古牛やらスパムおにぎりやら島おでんやら島焼きそば、ガーリックシュリンプとなぜか酢豚も。一心にエビの殻を全部剥く旦那(私が殻つき食べられないので)。島焼きそばおいしかった~~~。

 

<7月7日 晴れ>

今日も快晴。いやになるほど快晴。クリアカヤック日和。オールやライフジャケットなどなどを受け取って記念撮影。いえーい。


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私たちの他に、若めのご夫婦と孫とおばあちゃんのふた組みが予約していたので3チームで漕ぎ出すことに。インストラクターの宮古ダンディが笑いを交えながら漕ぎ方のレクチャー、注意点、見所などを説明してくれます。漕いでる姿を写真で撮ってくれたり、ドローンで映像撮影してくれるなどサービス豊富でした。最初は深い海上にいるのも揺れるのもメチャ怖かったんですが、慣れてくるとニモも珊瑚も見れてめっちゃくちゃ楽しかったです。(ほとんど旦那が漕いでいたが)チームのおばあちゃんたちと「ここ!ここに(ニモ)いたよ!」とか教え合ったり余裕も出てきました。写真ではぼやけてますが、実際はとてもキレイにお魚が見れました。


来間大橋をぶぃ~んと渡りまして。。。

 

ここはみんなが来ているAOSORAパーラー

サンデーモーニング(バナナと桃)、ブルースカイ(シークヮーサーと何か)。めっちゃくちゃウマイ。予想を越えてきます。ブルースカイおすすめ!

 

ちょっとトラブルがありましたが気を取り直して予約していたシースカイ博愛へ。半潜水艇と言えばいいかしら。

小さいお子さん連れが多かったのは、これ子ども向けだと思われてるかも?実際は海底都市あらわる!という感じで、自然の神秘をリアルに体験できる凄いものでした。大人でも100%楽しめます。子どもはもちろん、大人たちからもたびたび歓声が上がっていました。ウミガメは一瞬だけ、ウミヘビは目撃。いや本当にこれは良かった、さすが宮古島、レベルが違います。

 

そして夕食はリゾート内のイタリアンレストランへ。お料理はオサレで豪華ですが、ドレスコードもなくカジュアルなお店。ちょっと沖縄料理(というか和食)に飽きてきたので^^;

4日目終了~。

 

<7月8日 晴れ>

最終日!最後の最後まで楽しみます。…が、4日間でほとんどお目当ては消化しちゃったので、、昨日行き損ねた、まいぱり果実園へ。自動カートで周ります。暑すぎて死にそうでしたが、ヤギに草をやる時間が設けられていたり同行のガイドさんの説明がナルホドだったり意外と楽しめました。まいぱりロビーにあるカフェで、とれたて果物をスムージーにしてくれます。島唄ライブもありました。ここで?^^;やぎアイスはちょっと臭くて苦手だった。。そういえば私、ジンギスカンもダメなのよ。

あとは道の駅のフードコートで軽くお昼ごはん。お土産を買って発送するなどなど。

このあと、海中公園へ移動(まだ遊び足りない)。

なかなか面白かったですが、前日の潜水艇の迫力さめやらぬ状態なので、、順番間違えたかな?ここも本物の海の中なんですが。

まだ時間があるので、亜熱帯植物園へ。

ここは失敗でした、あまりの暑さに誰もいません。。滞在時間3分で逃亡することに。やっぱり無料の施設というのはゴニョゴニョ

 

ブルーシールでアイス食べない?」「いいねえ!」

ということで。。。

たまたま半額デーだったので、ダブルに。グァバ+パイン、紅芋などすべて沖縄モノ。

暑さでおかしくなりそうだったので、それはそれは美味しかった!

最後は空港でA&W。フライトまで4時間あったので^^;、てもみんでマッサージしてもらったりお土産を見たり。

 

いやあ、初めての宮古島旅行。楽しすぎて本気で帰りたくなかったです。。宮古島は一度行くとハマると聞いてはいましたが、完全インドア派のわれわれですら、来年の旅行も宮古島にしよう!と決めたぐらい。とにかく自然のスケールが半端なくてガーンときます。あと、人が優しいですね。

次はテロンテロンのサンドレスとかちょっと思い切った水着とか買ってオシャレして行きたいなあ~~。(しょうもないTシャツ+黒の夏ズボンだったので)みんな、宮古島用に買ったな?というような素敵なファッションの人が多かった。悔やむとしたらそれぐらい。あと、モノ落としすぎ。。2人とも、部屋から締め出しされたり「あ、朝食券忘れた!」「車のキーがない!」とか普段ならやらないミスを連発しまくり。気が抜けちゃうんでしょうかね。。

 

では、これにて。長々と読んでくださった方ありがとうございました~~~。

 

宮古島旅行記・前編 ~結婚十周年記念・つやつやマンゴーと宮古ブルーとSAM~

皆様こんにちは。われわれ夫婦、無事結婚十周年目を迎えることができました。今年は特別感を出すため初・宮古島旅行を決行。提案したのはわたくしです。2人とも「太陽、海、酒!」というキャラではないので、ちょっと不安もありつつ。旦那は通販でアロハシャツとか半ズボンとか防水スマホケースとかサンダルとか爆買いしてましたが。ノリノリだなおい。「似合ーう!」「色がいい!」と煽ててワクワク感をあおる私。

 

さて今回は4泊5日、10年間で1番楽しかった夫婦旅行のおさらいをおばさん構文でお届けします。

 

<7月4日 大雨 出発>

初日は割とゆっくりめに8:00出発。駅でパンを買って、はるか11号の中でもぐもぐタイム。もうすでに今が1番楽しい。満員のANAに乗り換えていざ宮古島へきーーん。

12:40宮古島着。

あつい。けど、大阪よりまし。レンタカー会社の方が迎えに来てくれていたので空港の写真などは撮れずでした。まあ、どっちみち大雨でそれどころではなかったですが。。

さて、どこに出しても恥ずかしくないペーパードライバー旦那様の運転でれっつごー。

 

まず向かったのはるるぶで目をつけていたスナヤマカフェ。小ぶりのアットホームな感じのカフェで、異国風のタコライスとピザが美味でした。ていうかもう13:30になっていたので空腹で味などわからん。

そして雨吹きすさぶ中、人気のすくぱりテラスへ。あまりの暴風雨と道の分からなさにちょこちょこ停車し、びちょぬれになりながら注文。お店には我々と同じような旅行客が大勢、同じようにびちょぬれ状態でマンゴーをつついておりました。

1700円くらいの1番でかいマンゴーにしました。あとマンゴージュースとマンゴープリンも食べました。着いたばかりなのでテンション上がりまくって前のめりです。この時が1番雷雨がすごくて、カフェの真横の農園に落ちたかと思わんばかりの音が響き店内阿鼻叫喚。

 

そして雪塩ミュージアムへ。

ミュージアムと言ってもほぼカフェ&雪塩菓子売り場。色んな珍しいお塩をかけて食べる雪塩ソフトをわけわけして食べました。雪塩を使った「ふぃなん」も。。レジにあるとつい。。雨、やみかけ。


このあとホテルへチェックイン。繁華街にあるので、ゆっくりしたあと予約していた居酒屋さんへ徒歩でぽてぽて。土産物屋さんを冷やかしつつ。あちこちで島唄生ライブが聴こえてきます。どのお店も予約でいっぱい。ミーバイが絶品でした。


今日は初日なのでこの辺にしといてやろう、ということで終了。


<7月5日 晴れ>

朝食バイキングで沖縄料理をつついて、かなり楽しみにしていたユートピアファームへ。ナビに嘘をつかれ周りに何もないサトウキビ畑のど真ん中で下ろされそうになりました。

着くとすごい行列!ここからとれたてマンゴーをお土産発送する人も多そう。店内にはさわやかなフルーツのかほりが。。

マンゴーパフェとカットマンゴー。うまーい。

そして農園見学。フルーツとハイビスカス、ブーゲンビリア。ここが予想以上に本格的で広くて、充実。人がいないのをいいことに、熱帯の中キャッキャと自撮りしまくるわれわれ夫婦。写真はほんの一部で、何十種類ものハイビスカスが咲き乱れておりました。ブーゲンビリア園も広くて、とても写真では伝えきれない夢の空間でした。

 

さてここでやっと?宮古島らしいお写真を。伊良部大橋からの宮古ブルー。写真や映像で見る通りの、いやそれ以上の美しさに言葉を失います。旦那はここで助手席の私にDQウォークのクエスト開放を命じました。。大自然の前で何させやがる。

そしてこれまた人気の「伊良部そば かめ」さんでお昼ごはん。

これがもう灼熱の中、座るところもなく30分くらい待たされました。。20人以上待ってたかしら?みんなお腹すいてるし暑いししんどいしでぐったりのご様子。。でも待った甲斐あり!の美味しさ。どこに器を置くのだというぐらいテーブルに異次元への穴が開いております(左の穴ってひょっとしてちょうど器がハマるとか?)。ラッキーなことに座敷だったのですが、隣に座っていたSAMみたいな風貌のお父さん率いるファンキーなご家族とちょっとお話をしたりして和みました。思い出をありがとうSAM。

 

今日泊まるホテルはこちら。インギャーマリンガーデンサンタモニカさんです。

 

まだ時間があるので、無料のリフト券を片手にシギラリゾート内をうろちょろ。

リフトからの眺め。高所恐怖症のわたし、無料券につられ乗ってみたものの怖い暑い(暑いというより熱い)でガクガク。ビーチ内のカフェでかき氷&パッションフルーツジュースをいただくなどして時間つぶし。ここは水着のまま入れるカフェだそう。

さらに時間があるのでうえのドイツ文化村へ。

ご覧のとおり、あまりの暑さに誰もいません。。広すぎる村内。まあその、無料の施設ってやはりそれなりというか……ここは行かなくてもいいかも(ボソッ)。村内のビーチの美しいこと。この景色を独り占めできる贅沢。でもあつい。帰ろう。

 

夕食はお待ちかねの豪華ビュッフェ。

 

 

というわけで楽しい2日目終了。つづく。

 

魔偶の如き齎すもの  (ねこ3.9匹)

三津田信三著。講談社文庫。

所有する者に福と禍(わざわい)を齎すという”魔偶”。その、奇妙な文様が刻まれた土偶を確かめに、刀城言耶は旧家・宝亀家を訪れる。すでに集まっていた客たちは、話し込む当主と言耶をよそに次々と魔偶を収めた”卍堂”に向かうが……。表題作他、文庫初収録「椅人の如き座るもの」を含む全五編を収録したシリーズ第三短編集。(裏表紙引用)
 
如きものシリーズ短篇集第3弾。文庫初収録作を含む5篇収録の、ファン満足度の高い一冊。面白かった、短篇集の中ではピカイチかも。全て、「水魑~」以前の刀城言耶が大学を卒業してから3年後くらいの時代のもの。…だと思う。
 
「妖服の如き切るもの」
坂の中途に建つ二つの砂村家では、息子を交換する形でお互いの甥(三男)と主人が暮らしていた。ある日双方の主人が殺害されるが、息子2人にはどちらもアリバイがあって…。犯人が判明している状態で、トリックを暴くミステリー。使用人や近所の住人が重要なコマとなっている。事件とは別にある、人にとり憑く妖服の呪いが不気味。
 
「巫死の如き甦るもの」
ある村の織物業の元締め一家の次男が、村の中に独自が管理する自給自足のもう一つの村を作ったという。その村では6人の女性が歩かない、話さないなどの苦行が行われていた。やがて自身を不死だと触れ回る次男の行方が分からなくなり…。短篇としてはかなり状況説明が長くなってしまう。長篇でも読みたかったと思うぐらい詰め込まれた内容。苦行の設定もイイし別の殺人事件も絡むあたりも読みごたえあり。真相にビックリ。おえ。怪異的なオチも〇。
 
「獣家の如き吸うもの」
山中道に迷った歩荷と学生の体験した10年越しの怪異を、言耶が話し伝いに解き明かす。彼らが出会ったのは果たして同じ家なのか?そして現代に繋がる意外な真実とは。
怪異ではないリアルな部分と、やはり怪異の部分とのバランスが良し。しかしここまでするかね。。。
 
「魔偶の如き齎すもの」
2つ所有すると幸運と禍を齎すという魔偶。禍の大きさに尻込みする者は多いが、欲深い人間はやはりいるもの。魔偶の所有者宅に集まった男たちと編集者の体験した殺人未遂事件の真相とは。。。入口が4つあるあたり、ミステリー好きの好奇心をくすぐる感じ。言耶の、一人一人を名指しして犯人ですとやるやり方、ちょっと頭が悪いのでわかりにくかったが、そこだけを見ていては見えないものがあるということ。祖父江偲初登場作。
 
「椅人の如き座るもの」
木材商の三男が製作する木彫りの不気味な家具たち。それは全て人間をモチーフにしており、なおかつ実用性に富むものばかり。しかしそれを快く思わない身内が工房で行方不明になり。。。まさに乱歩世界。この設定だけでご飯3杯。消えた遺体の謎もすべて世界観を壊さないものだったしかなり好み。
 
以上。
短篇ではもったいないアイデアが多々。特に「巫死」と「椅人」がお気に入り。曲矢刑事の変わりに小間井刑事というのが活躍するのが特徴かな。偲さんとの出会いも読める。言耶の推理方法は当時から変わってはおらず、論理的だが残る謎には不条理性を受け入れる、だそうだ。三津田ミステリの特徴でもあるよね。

オルゴーリェンヌ  (ねこ3.7匹)

北山猛邦著。創元推理文庫

検閲官に追われる少女と出会ったクリスは、再会した少年検閲官エノと共に、少女が追われる原因である〈小道具〉を探し求めて孤島の洋館に向かう。そこで待ち受けていたのは、洋館に住むオルゴール職人たちを襲う連続不可能殺人だった! 先に到着していたもう一人の少年検閲官の支配下に置かれた場所で、三人は犯人を突き止めるべく、トリックの解明に挑む。〈少年検閲官〉シリーズ第二弾にして著者最大の力作、待望の文庫化!(紹介文引用)
 
「少年検閲官」シリーズ続編。
 
な、なっがい・・・。580ページ。旅行やらなんやらで間に6日間ぐらいあけてしまったので、読んでも読んでもなくならない地獄に陥ってしまった。加えて後半の硬質?の物理トリックに次ぐ物理トリック、どんでん返しに次ぐどんでん返し、、もうこんがらがってどうでもよくなってしまったすいません。。図解はあったけれども、マンガでもなんでもいいからこれ実際に可能なのか誰か検証して欲しい。。橋をアレするためのアレの仕掛けとか、塔の首吊りとか、映像思い浮かべたらシュールすぎるんですけど。。バカミス一歩前。
 
まあそれはそれとして、相変わらずメルヘン世界に拍車がかかっていてどっぷり浸ることはできた。検閲官エノのクールさもいいし、語り手クリスの平凡+聡明さも変わらずで印象よし。新キャラのユユのキャラも立っていて、クリスとお似合いな気がする。他にも義手とか人間オルゴールとか色々面白かったな。ちょっと不気味で。もう一人検閲官、カルテもなんだかとんちんかんと見せかけてなんだか含むものがありそう。なんといっても1番を持って行ったのは最後のあの人物だよねえ。人間ああなると人生の忘れ物を取り戻したくなるものなのか。クリスは立ち直れるのかな。まあ、続編はあってもどっちでも。ほんとかなりしんどかったので。。これから読む人は可能なら2,3日で一気読みすることをオススメします。飽きてきます。。。