すべてが猫になる

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短篇七芒星  (ねこ4匹)

舞城王太郎著。講談社

遠くで小さく光るあの七つ星は世界が爆発して出来た超新星。 ドカンって音は、読み終わるころにやってくる。 言葉が並んで爆発した星を、七つ並べてもっかいドカン!(紹介文引用)
 
舞城さんの新刊。「短篇五芒星」に続く、七篇収録の短篇集。「五」はとても好きな作品なので、期待して読んだ。とにかく文体と同じく勢いにまかせ読むのもグワーっと。
 
「奏雨」
連続足切り殺人事件を追う刑事と、友人の探偵奏雨(ソウ)。ソウという名前が色々結び付けられて言葉遊びのようになってる。映画「ソウ」の考察が象徴的。これだけのショートストーリーで2人のキャラクターが明確になっているのすごい。
 
「狙撃」
狙撃手マークスマンの撃った弾丸は、はるか遠い異国の悪人たちの心臓の中にくい込む。舞城世界ならでは。未来の結末さえも踏まえて主人公の運命が翻弄されるさまが描かれる。
 
「落下」
マンションに引っ越して来た4人家族。その日に起きた飛び降り事件、そして毎晩聞こえてくる落下音。マンションをめぐるある出来事を、頼りない父親が解き明かす。ってなぜ子どもに丁寧語。。こういう発想が舞城さんのおもろいところ。
 
「雷撃」
悪いやつらに報復する、人間の心を持った石を育てる少年は、クラスメイトのシービーとの交流を経て様々な疑問と葛藤が。石と少女との三角関係?この石を持っていて本人に禍はなさそうだけど、普通には生きられないよね。それに気づかせてくれたのかな。
 
「代替」
生まれながらの極悪人の<視点>が語る二人称小説。本人と入れ替わってから人格まで変わってしまった男の運命は。これもある意味友情なのか。ちょっとハードボイルドな作風。
 
「春嵐」
兄の彼女の弟が拉致されてさあ大変。飼い犬ストームをけしかけて、いいところを見せようとする兄だが…。クモ膜下出血だの肺が半分だの、死にかけてるのにこのノリはなに。。何か知らない感情に目覚めた妹といい、愛のカオス。
 
「縁起」
3歳の娘が、母親の子宮にいる豚に弟が捕まったと話し出す。子どもの作り話、妄想だと微笑ましく聞いていた父親と真に受けて人が変わったようになる母親。いつもの噛み合わない感じが舞城作品らしくてテンション上がる。噛み合わないままじゃなくて、なんだかハッピー展開になるあたりいいな。
 
以上。
訳のわからないいつもの舞城ワールドがハイスピードで七本分。じっくり丁寧に読むなんて出来やしない。理解のしやすさは「五」、ハチャメチャさは「七」かな。「五」のほうがぶん回された気がするけど、ノリの良さと面白さは相変わらず。