すべてが猫になる

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クジラアタマの王様  (ねこ4.2匹)

伊坂幸太郎著。新潮文庫

記憶の片隅に残る、しかし、覚えていない「夢」。自分は何かと戦っている? ――製菓会社の広報部署で働く岸は、商品への異物混入問い合わせを先輩から引き継いだことを皮切りに様々なトラブルに見舞われる。悪意、非難、罵倒。感情をぶつけられ、疲れ果てる岸だったが、とある議員の登場で状況が変わる。そして、そこには思いもよらぬ「繋がり」があり……。伊坂マジック、鮮やかなる新境地。(裏表紙引用)
 
伊坂さんの文庫新刊。
 
製菓会社に勤める岸、都議会議員池野内、人気ダンスグループメンバー小沢ヒジリの三人は、共通の夢で戦っていた。夢での戦いに勝つと、現実の出来事がうまくいくのだ。そして現実で出会い情報を提供し合う三人はさまざまなトラブルに巻き込まれ…。
 
過剰過ぎるネットやマスコミの批判をかつていじめられていた自分と重ね合わせ、世間をパニックにさせたパンデミックさえも「現実の世界で撃退」する岸の姿に感動した。話の通じない会社の老害たちの登場には胸かきむしられる思いだったが、悪人を必ず成敗させる伊坂作品らしく痛快な最後。池野内議員は全国に愛人がいたり法を犯したりするけど、なんだかんだ行動力もリーダーシップもあって引き込まれる人物だったな。小沢ヒジリは一貫していいやつ。サーカスで脱走したクマやらトラやらと対決するシーンは手に汗握ったねえ。10年前の火災やら、販促グッズとか、出てきたものが全部最後に繋がるのもすごい。これがコロナ前に書いたものだというのが驚愕。重なり合うところも多くて、知らなかったら絶対これはコロナ禍に書いたものだと思っちゃう。
 
ところで、たくさんの挿絵たちが印象的だったな。ハシビロコウ迫力(結局敵だったの?)