すべてが猫になる

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ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~ (ねこ3.7匹)

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三上延著。メディアワークス文庫

太宰治の『晩年』を奪うため、美しき女店主に危害を加えた青年。ビブリア古書堂の二人の前に、彼が再び現れる。今度は依頼者として。違う『晩年』を捜しているという奇妙な依頼。署名ではないのに、太宰自筆と分かる珍しい書きこみがあるらしい。本を追ううちに、二人は驚くべき事実に辿り着く。四十七年前にあった太宰の稀覯本を巡る盗難事件。それには二人の祖父母が関わっていた。過去を再現するかのような奇妙な巡り合わせ。深い謎の先に待つのは偶然か必然か?(裏表紙引用)
 
シリーズ第6弾~。
 
いよいよ物語が佳境に入ってきたかな?
 
いきなり五浦くんが満身創痍状態で入院&智恵子登場というパンチの効いたプロローグにビックリ。なんでこうなったのか?ということで第一章に突入していく。栞子さんにとって暗い過去である田中から太宰のかなり珍しい書き込みがある「晩年」を探して欲しいという依頼が。そして47年前「ロマネスクの会」が起こしたと見られる太宰の稀覯本盗難事件も絡んで、複雑な人間模様が描かれていく。
 
今回は完全太宰一色。盗難事件のトリック&ビブリア古書堂に脅迫文を投げ込んだ人物は誰か、晩年を所持しているのは誰かなどなどミステリとしてはてんこ盛りの内容。正直、かなり混乱していつもみたいに夢中で読めなかった。身内が絡んでいるので苗字が色々被ってるんだよな。。信頼していた人間に裏切られる気持ちは分かるけど、犯罪を犯してまで稀覯本とやらを所持したい気持ちは全く分からない。知的でもなんでもない、欲と無意味な矜持だけの世界に嫌悪感が湧く。
 
そして五浦くんと栞子さんはラブラブモードのようだが、事件に精一杯であまり関係に進展がないのがもどかしいな。

QED 竹取伝説  (ねこ3.7匹)

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高田崇史著。講談社文庫。

「鷹群山の笹姫様は…滑って転んで裏庭の、竹の林で右目を突いて、橋のたもとに捨てられた」。不吉な手毬唄が伝わる奥多摩織部村で、まるで唄をなぞったような猟奇殺人事件が発生。ご存じ桑原崇が事件の謎を解きつつ、「かぐや姫」の正体と『竹取物語』に隠された真実に迫る。大好評シリーズ第6弾。(裏表紙引用)
 
QEDシリーズ第6弾~。
 
竹取物語に興味があったのでワクワクして読んだ。織姫と彦星のお話といえば奈々ちゃんと同じくロマンチックなイメージだったけど、すっかり凹まされてしまった。。それどころか、節分などの毎月の行事ごとまで全部ひっくり返された感じ。
 
50年前奥多摩にある織部村と斐田村を結ぶ鵲橋で起きた殺人事件が、現在発生した鷹群山の魔のカーブに関連した竹串刺し殺人事件とどう絡みつくのか。事故の名所だけあって登場人物が多く、さらに田舎だけに関係が密接でややこしいがやはり事件の原因は村にまつわる笹姫様の呪いにあった。動機などを鑑みても到底現代に生きる我々には途方もつかない感性だが、平安時代今では信じられないような差別や犯罪が当たり前にあったことを踏まえれば仕方ないのかもしれない。殺人はダメだが。タタルがまたしても関係者を集めて例の薀蓄を披露し推理しと大活躍だが、気をつけないと今回みたいに命を狙われてしまうかも。それにしても、働いている人が皆賎しいとはなあ。。
 
しかし小松崎が奈々ちゃんも呼ぼうと言ってくれたのに「なんで?」はないよタタル。。奈々ちゃんはタタルに会う時はヘアスタイルまで気にしているというのに!「崇の話を聞きたいだけだった」奈々ちゃん、いいね。

ハロワ!  (ねこ3.8匹)

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久保寺健彦著。集英社文庫

さまざまな事情を抱えた求職者たちが訪れる、ハローワーク宮台。沢田信は、民間の人材紹介会社から転職したばかりの新米就職相談員だ。慣れない業務に励む信を「指名」してやってくるのは、一癖も二癖もある求職者ばかり。理想が高くて尊大な元銀行マンに、面接を怖がるアラサー女子…。信は彼らの信頼を勝ち取ることができるのか?理想と現実の間で揺れる28歳男子の「お仕事探し」奮闘記。(裏表紙引用)
 
久保寺さんにハマリ中。今度はハローワークに勤める28歳の主人公・沢田信と求職者たちの奮闘を描いた物語。
 
リストラ騒ぎなどで転職を重ねてきた信は、かつて求職のために訪れたハローワークでスカウトされ、嘱託として相談員として働くことになった。最初は不慣れで成績はほぼ最下位続きだったが、信の誠実な対応が徐々に指名を増やして行く。。
 
現実の見えていない求職者たちが次々と信を指名しては翻弄してしまう。68歳の元配管工は上品なオフィスで事務員がやりたいの一点張り、元銀行員はリストラされたストレスを信たちにぶつけ無理難題をふっかけ土下座も要求、精神不安定な30代の女性は信に依存し自殺をほのめかす。人生を、就職を舐めまくってる人間たちに本当にイライラさせられたが、信が相手を思うあまり正直すぎるところは気に入った。不採用理由が「歯がない」とか「尊大」とか(笑)。でもそれぞれ「収まるべきところに収まらない」という変わった作品だったと思う。あれ、就職しないの?あれ、心入れ替えないの?みたいなパターンばっかり。これがリアルと言えばリアルなのかもしれないが、それに代わるべき物語としての奥行きもあまり感じられなかったかなと。信の対応は公務員の流儀にはそぐわなくても、自分だったら、この人が自分の相談員だったら就職出来るだろうなと思えた。自分はハローワークには人生で一度、失業保険の関係で通ったことがあるきりなので。でもまあこんな相談員いそうにないけど(偏見)。
 
あと、奈美との関係の進展にはビックリした。信は結構イケてる奴だということかな。最初「不倫じゃん」と思ってたんだけど、奈美のほうに事情があるのでまあ、人間、こういうこともあるよね。ああいう男と結婚してしまって子どものために別れられない人って気の毒だなあ。ラストの岸川の暴走には肝が冷えたけど、沢田ファンクラブの3人(笑)の活躍は良かったね。
 
もう一歩なところもあるけど、今のところハズレはないしこの作品も一気読みしたくなる面白さ。次はどれにしようかな。

ビッグ・ドライバー/Full Dark, No Stars  (ねこ3.7匹)

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スティーヴン・キング著。高橋恭美子・風間賢二訳。文春文庫。

小さな町での講演会に出た帰り、テスは山道で暴漢に拉致された。暴行の末に殺害されかかるも、何とか生還を果たしたテスは、この傷を癒すには復讐しかないと決意し…表題作と、夫が殺人鬼であったと知った女の恐怖の日々を濃密に描く「素晴らしき結婚生活」を収録。圧倒的筆力で容赦ない恐怖を描き切った最新作品集。(裏表紙引用)
 
これは原題の単行本を「1922」「ビッグ・ドライバー」に二分冊したうちの一冊。二作収録の中編集。
 
「ビッグ・ドライバー」
年配女性向けのミステリーシリーズで人気を博している女性作家が講演会に呼ばれ、その帰り道に車がパンクし暴漢に襲われ生還し、復讐を果たすという物語。キング作品でこういうリアルな事件をテーマにしたものは新鮮だったかなあ。パイプの中に押し込まれていた白骨・腐乱死体の恐怖よ。。でもキングにしてはその描写が甘いかな。復讐ものとしてスカっとするのかと思いきや、意外とその復讐はあっさり。でもそのあとにミステリ的な意外性があったり、ある人物と絆を深めたりと「後日談」の面白さが生きてる。
 
「素晴らしき結婚生活」
キング作品でこういうタイトルだと「そうじゃなさ」を楽しませてくれると期待しちゃう。20年以上連れ添ってきた会計士の真面目で優しい夫が、何十年もアメリカを震撼させてきた連続殺人鬼だと知った妻の恐怖が描かれる。ガレージで見つけた卑猥な雑誌と被害者のIDカードだけで夫の正体を見破った妻。これもまた、妻の奮闘はあっさりと片付いてしまうので拍子抜け。そしてこれもやはり「後日談」が効いてる。
 
以上。
テーマは好みなので面白かったが、ねちっこさや追われる恐怖といったものは薄かったかと。弱い普通の女性が男に酷い目に遭い反旗を翻すという意味では爽快かもしれない。ちょっと個人的には物足りないが、ページ数もあまりないのでこんなものかと。悪くはない。

猿の見る夢  (ねこ3.9匹)

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桐野夏生著。講談社文庫。

十年来の愛人しか今の薄井の楽しみはない。それなのに逢い引きに急ぐところ、会長が社長の怪しいセクハラ問題を耳打ちする。家には謎の占い師が居座り、女のマンションで機嫌をとっていれば、妹が電話で母の死を知らせてくる。「なぜみんな俺を辛い立場に立たせる?」欲深い59歳の男を徹底的に描く過激な定年小説!(裏表紙引用)
 
桐野作品を読むのは久しぶり。偶然新刊紹介であらすじを読んで面白そうだと思ったので。
 
いやいや、相変わらず登場人物に容赦ないな。桐野さん、初老のビジネスマンに何か恨みでもあるの?(笑)と思うぐらい徹底的にやられてしまう主人公・薄井。もちろんこの手の男はめちゃくちゃ嫌いだし軽蔑するが、階段を転げ落ちるように何もかもが駄目になってしまう展開に思わず哀れんでしまった。
 
59歳の薄井は銀行からレディースファッションの製造小売業会社へ出向し、現在の地位は財務担当取締役。妻と2人の息子、そして10年越しの愛人・美優樹がいる。それなりに上手くやってきたが、社長のセクハラ問題にひと肌脱ぐことになるわ妻はおかしな占い師の老婆を自宅に住まわせるわ母が亡くなり妹には絶縁されるわ二世帯住宅の夢は潰えるわ愛人の美優樹はなんだかイライラしているわ…。占い師(詐欺師?)の長峰の存在感がこの物語のキーとなっているが、ホントに疫病神だったんじゃないのか。
 
とにかく薄井のアッチがダメならコッチ、コッチがダメならアッチ、という不誠実さにげんなり。ファストファッションを着こなす肉感的な秘書に突然惹かれ、スタイル抜群でお洒落と今まで評価していた美優樹を貧相な身体、ブランド志向と蔑み始め、その秘書が実は気が強いと分かったらやっぱり美優樹が愛しいと言い始め、その美優樹と揉め事になったらやれ古女房が1番だとほざき出し、その妻に見放されそうになったらやっぱり美優樹、いや秘書だとコロコロコロコロ…。これが約600ぺージ、延々続くんだからねえ。。かと言って出てくる女性たちも決して魅力的だとは言えない(長所はあるにしても)。全員ヒステリー気質というか。いや、怒らせてるのは薄井なんだけど。遺産問題で遺書を盗んだり、愛人が母の告別式に乗り込んだり、万事休すか?と思わせてギリギリ踏みとどまる(ように見えてるだけだが)あたりじれったいというか、いやこのまま読み続けたいというか。ここまで最悪な男そうそういないと思う。多分、仕事はまあまあ出来て容姿も悪くないんだろうからモテないこともないのは分かるけど。
 
イライラしながらも読む手が止まらなくて最高に面白かったんだけど、終わり方が性急だったのが残念だった。もっとコテンパンにやられて欲しかったなあ。この後どうなるかは想像がつくけれど、描かないあたり桐野さんの優しさなんだろうか。まさかねえ。
 
で、この「猿」っていうのはてっきり薄井のことだと思っていたが(まあそれも意味合いとして含んでいるんだろうが)、日光東照宮の三猿のことみたいね。こわいこわい。

ラストナイト  (ねこ3.8匹)

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薬丸岳著。角川文庫。

居酒屋「菊屋」に刑務所を出所したばかりの片桐が現れた。顔面に豹柄の刺青を入れた特異な容貌で犯罪を繰り返す友人に、店主の菊池は忸怩たる思いを持っていた。片桐が初めて逮捕されたのは菊屋で傷害事件を起こしたときだったのだ。それは暴力団員から店と菊池の妻を守るための行動だったが、それ以降、片桐は人が変わったように次々と犯罪に手を染めるようになる。男はなぜ、罪を重ねるのか?圧倒的な結末、入魂のミステリ。(裏表紙引用)
 
薬丸さん盛り返したなあ。一時期イマイチな作品が続いてもう終わりかなって思っちゃったのだけど、きっちりこの作品で取り返してくれた。
 
主人公は料亭を営むやもめの菊池。息子が結婚し子どもが生まれ、店を息子夫婦に譲ろうかと考えていたところへ、かつての友人片桐が訪ねてきた。片桐は数年前菊池の店で障害事件を起こし、服役して出所したところだった。さらに片桐の顔面にはおぞましい刺青が入れられ、次々とこすい犯罪を繰り返す。かつて結婚し娘が生まれ、優しかったはずの片桐の身に何が起きたのか?
 
最初は片桐のあまりの風貌や暴力的な行動、刑務所に出たり入ったりしているという性質に全くいい印象を持てなかった。昔いい奴だったからと言って、ここまで堕ちてしまった男を受け入れる菊池にも反感を持ったし。しかしまさかこんな悲しい過去を背負っていたとは…。こんなやり方しか出来なかったのだろうか、と胸苦しい思いでいっぱいになる。顔だって刺青以外の方法なかったのかなあ。娘のひかりや弁護士の中村にも背負うものがあって、このままでは誰も幸せな未来に希望が持てないのでは、と。やりきれない結末だが、これで少しは片桐も報われるのだろうと思えてならない。
 
約250ページの短い小説だが、内容はぎっしり詰まっていて読み応えあり。

ヤギより上、猿より下  (ねこ4.2匹)

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平山夢明著。文春文庫。

山の麓の売春宿にやってきたオランウータンのポポロと、ヤギの甘汁。動物たちの活躍ぶりに、人間が戦慄する表題作をはじめ、“極限状況”に置かれた人々の悲哀と、そこから見いだした美しい光を、リズミカルな文体と、ぶっとんだユーモアでお届けする“イエロートラッシュ”シリーズ・第二弾の全四編。(裏表紙引用)
 
二ヶ月連続刊行の平山さんの文庫シリーズ。帯に「どうぶつ好き、あつまれ~!」って書いてあるけど内容詐称にも程があってだな。。いやもう、こんな小説がこの世にあることを皆に教えたいぃ、でも隠したいという複雑な気持ちになること請け合い。
 
「パンちゃんとサンダル」
ろくでなしの父親からひどいDVを受けている母親、そして9歳の息子タクムと妹のアヤ。このひどい日常から逃れたいだけの無力な子どもに、同アパート住人の外国人が突きつけたメモがひどすぎる…。ラストの「めでたし、めでたし」がもう…。。
 
「婆と輪舞曲」
30年前に行方不明になった娘をまだ探し続けているババの支離滅裂な話を聞く仕事って。。主人公の娘も大変なことになってますけど。でもあのことが最後に繋がるとは思わなかった。こっちがめでたしだよ。
 
「陽気な蠅は二度、蛆を踏む」
読み終わると、これタイトル通りの話なんだな。ヤクザの世界って一度入ったら抜けられないんだろうな。自分の息子と対面できたと思いきや、息子が殺しのターゲットだったとはなあ。。普通バラしたら逃がすよね^^;轢くんかい。自業自得だけど出てくる人全員悲しい。
 
「ヤギより上、猿より下」
売春宿を舞台に、売れない4人の淫売がヤギ、猿と売上を競う話…ってことでいいのか?ものすごい展開になるけどこれ。。。気持ち悪さとか残酷さとか通り越して、1つの世界観を確立してるよこれ。ものすごいスピードで収束していくのが、こんなエグい話なのに感激してしまったわ。。
 
以上。他も面白いのだけど、「ヤギより上~」の面白さが群を抜いてる。淫売界?の言葉とかオリジナルなのかなあ。だとしたら凄いセンスだけど。パワーというか疾走感というか、お下劣全開でいつもの平山「愛」ワールドが炸裂してて大満足。