すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

白鳥とコウモリ  (ねこ3.7匹)

東野圭吾著。幻冬舎文庫

二〇一七年、東京竹芝で善良な弁護士、白石健介の遺体が発見された。 捜査線上に浮かんだ倉木達郎は、一九八四年に愛知で起きた金融業者殺害事件と繋がりがある人物だった。​ そんな中、突然倉木が二つの事件の犯人と自供。事件は解決したと思えたが。​ 「あなたのお父さんは嘘をついています」。​ 被害者の娘と加害者の息子は、互いの父の言動に違和感を抱く。​(上巻裏表紙引用)
 
東野さんのノンシリーズ文庫新刊。割と評判のよい作品だったので、ノンシリーズといえど楽しみにしていた。上下巻とは珍しい、さぞ単行本は分厚いものだったに違いない。とはいえさすが東野作品、長さを感じさせない面白さで2,3日で読み終わった。
 
2017年と1984年に起きた別々の殺人事件を題材にしたミステリー。人格者の弁護士が殺害され、私がやりましたと簡単に自白した容疑者。84年の詐欺師殺人事件とも関連があるらしい。しかし被害者の遺族・白石美令は父親の言動に違和感をおぼえ、加害者の家族・倉木和真は父親がそんな理由で殺人を犯すような人柄ではないという。対照的な2人は運命に導かれ、互いに手を組み真相を追い求めるが。。
 
被害者遺族、加害者家族を白鳥とコウモリに例え、敵対するはずの2人が惹かれあい手を組むというのが設定としていいと思った。父がこんなことを言うはずがない、こんな考え方をするはずがない、という主張、確信は親しい人間でなければ分からないもので、加害者が事実を認めているのだから余計なことをするな、裁判で重要なのはそこではない、と互いの弁護士らが消極的なのがもどかしい。
 
真相のほうは、引っ張った割に想像の範疇を超えるものではなかったかな、と。読者の立場としては、倉木の言っていることが間違いで美令や和真の言い分が正しいのだろうと予想がつくし、84年の事件については被害者がそもそもクズなので、要は「誰がやったか」が違うだけなのだろうと分かる。現在の事件の方の犯人には驚いたが、伏線らしい伏線がなかったのだからそりゃ意外だろう、としか。。ちょっと卑怯だよね。動機も投げやりな感じがするし。リアルさはあると思うけれど、もっと掘り下げて欲しかったかな。こういう動機ならこういう動機なりの持って行き方があると思うので。
 
う~ん、まあ面白かったけど、評価としては普通かな。。