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霊応ゲーム/The Wishing Game (ねこ3.8匹)

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パトリック・レドモンド著。広瀬順弘訳。ハヤカワ文庫。

 

1954年、イギリスの名門パブリック・スクールで学ぶ14歳の気弱な少年ジョナサンは、同級生ばかりか教師にまでいじめられ、つらい日々を送っていた。しかしある時から、クラスで一目置かれる一匹狼のリチャードと仲良くなる。二人が親密になるにつれ、ジョナサンをいじめる悪童グループの仲間が一人、また一人と不可解な事件や事故に巻き込まれていく…彼らにいったい何が?少年たちの歪んだ心を巧みに描いた幻の傑作。(裏表紙引用)

 


2000年に邦訳出版された作品で、2015年「復刊ドットコム」で絶大な支持を得た作品らしい。特にランキング系に引っかかったわけでもベストセラーになったわけでもなく絶版になったらしいが、口コミの力で広がったとのこと。

 

表紙がBLっぽいのが気になったものの、まああらすじを見る限り好みっぽいかなと思って手を出したのが運のつき、腱鞘炎必至の約630ページトールサイズに苦戦した。上下に分けてくれよ。タイトルの「霊応」というのは何らかのレトリックなのかと思っていたが、どうやらそのままの意味、オカルトの分野らしい。いじめっ子に対してどうやって復讐するのか期待していた身には肩すかしだった。主人公ジョナサンは消極的で内向的な少年ながら、クラスで浮いているわけでも友だちがいないわけでもなく、教師の1人といじめっ子グループに執拗な嫌がらせをされているという状態。家庭にも問題があり、学校生活や自分に嫌気が差していたところへ出会ってしまった一匹狼の少年、リチャード。このリチャードがまたミステリアスという言葉を軽々と越えて、危険な存在になってしまっている。目で人を殺せそう。

 

この作品、教師から校長からその妻から、1人1人をきっちり掘り下げるのでテンポは非常に悪い。最初に復讐を受ける人物がやっとリチャードの毒牙にかかったのは250ページも過ぎてからだし、そこからも登場人物の過去や秘密を暴くことにページを費やし、なかなか事件が起こらない。何よりもこの物語が鬱屈した閉塞的な雰囲気なのは、若者特有の視野の狭さと、パブリックスクールという閉じた世界の親和性の高さがそうさせているのだろう。とにかく終始どんよりと暗いやり切れなさがあった。女であろうと男であろうと、友だちの取り合いって若者の専売特許なのかな。結局は両親に必要とされなかった子どもが、自分の存在価値を友だちで埋めようと必死に足掻いているように見えた。みんながみんな、時代の、大人の犠牲者だった。