すべてが猫になる

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比例区は「悪魔」と書くのだ、人間ども  (ねこ3.8匹)

藤崎翔著。光文社。

イロモノ候補かと思われたサタン橋爪率いる「悪魔党」。真っ当な政権公約に次第に人気を集め、やがて世界中に「悪魔運動」を起こすほどになるがーー(表題作)ほか、元お笑い芸人の著者が繰り出す、"読むコント"全12編。(紹介文引用)
 
藤崎さん2冊目。
べるさんのところで記事を読まなかったら絶対出会ってなかった気がする作家さん。以前これまたべるさんきっかけで読んだ「神様の裏の顔」(だっけな?)がなかなか凄かったのでまた読みたいなーとは思っていた。意外に多作な方で、もう10冊くらい出てしまっているかも。。この作品もとても気に入ったので、もうちょいペースを上げて読んで行きたい所存。
 
本書は6編の短編と6編のショートショートが収録されている。ちなみに文庫化もされており、そちらは「三十年後の俺」というタイトルに改題されている。そもそも、よくコッチのタイトルで出版許可?が出たなと思うレベル。おそらく藤崎さんにはもう一定数の固定ファンがついていて、本が出ればどんなタイトルであれある程度の部数が見込めるのであろう。たぶん。。
 
前置き長い。どれも面白かったなー。「日本今ばなし 金の斧 銀の斧」の、現代の人間の神様を敬わなさにキレる神様が面白い上、それだけで落ちないところが良かった。「一気にドーン」アンチエイジングで成功した女性がひと晩で老け、誰からも自分だと分かってもらえずに逃亡するサスペンス。完全にコント。「伝説のピッチャー」、これが特にお気に入り。借金のカタに八百長を強要された野球選手、負けようとしたら勝って勝とうとしたら負けて。。いいかげん、ヤクザも学習しろよって感じだけどね笑。
 
「心霊昨今」は心霊写真や幽霊を全然信じてくれなくなって嘆く現代の幽霊。ユーチューブに必死に映ろうとする姿に哀れみとおかしみを感じてしまう。原題の比例区~」は結構このまんまの内容なのよね。デーモン閣下みたいな男が選挙に立候補して意外に支持されるっていう。結構言ってることはまとも。「三十年後の俺」は文庫化にあたりタイトルになっただけあって、なかなかホロリとさせる感動話。離れ離れになっ、、おっと、これ以上言えないんだった。
 
ショートショートもなかなか切れ味が良くて、こういうのもお得意なのかと感心させられるものばかり。特に「シンデレラ・アップデート」「マッチングサイト」が良かった。現代にシンデレラがいたらこう考えるのかも。。「マッチングサイトマッチングサイト」には笑ってしまった。AIが小説を書く、っていうのはもう現実化しているよね。
 
元お笑い芸人さんらしく、どれもコントのように笑えて面白いのはもちろんのこと、どれも予想のさらに先まで展開していくのが凄いと思った。さらに、現代の価値観や常識をきちんと描きながら現在の社会問題も真摯に向き合っている感じ。かなり作者は頭のいい方なんじゃないかな。今後も注目したい。次はどれ読もう。