すべてが猫になる

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数学的にありえない/Improbable  (ねこ3.8匹)

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アダム・ファウアー著。文春文庫。

ポーカーで1万1千ドル大敗し、マフィアに追われる天才数学者ケイン。だがその時、彼を悩ませていた神経失調が、驚異の「能力」に変わった。それを狙う政府の秘密機関と女スパイ。彼らが権力を駆使して追う「能力」とは?執拗な追手にケインはどう立ち向かうのか?幾つもの物語が絡み合う超絶ノンストップ・サスペンス。 (上巻裏表紙引用)


2006年に話題の本となっていて、たしか何かのランキングにも入っていたと思う。このたび文庫化という事で、いそいそと読んでみました。ここ数日の新刊ラッシュと漫画ブームの煽りをくらってチビチビと毎日読み続け、やっと読了。

作者が統計学者だと言う事がひしひしと伝わる、確率論相対性理論ユング集合的無意識その他もろもろの講義がまぶしい、数学的エンターテインメント。専門的なものではなくストーリーを読者にわかりやすくする為のものなので、そういうのが苦手な読者でも抵抗なく読めます。あくまで物語の核は、ケインの神経失調と彼の力を求める科学者、それに絡むCIA工作員ナヴァとの攻防になります。
言葉に韻を踏むケインの双子の兄・ジャスパーの存在も大きいですね。数々の裏切り者や殺し屋、ハッカー、宝くじに当たった青年などが目まぐるしく物語を動かしていて面白い。

サスペンス色の強い上巻から、ノンストップアクションに移り変わって行くのでこのあたりはそれほど
斬新さはないかな?やたらと人が撃たれるので、自分としては盛り下がります。一体どこへ収束して行くのかが読めないため、油断は出来ません。ちょっとした仕掛けが1つ2つあったのでミステリ的にも
楽しめますが、物語としては随分綺麗にまとまった気がします。感動的ではありますが。ケインとナヴァの関係はほったらかしでいいのでしょうか。。

しかし、日常で何かを選択する時に「成功する確率87.874パーセント」とか言われる毎日って想像したらしんどいなあ^^;便利なんだろうけど。そこを敢えて人間的に、確率よりも感情を優先するべきものを描いているのが作品の長所だと思います。惜しむらくは、キャラクターに思い入れられなかった事。それも踏まえて、やっぱ系統的にもジェフリー・ディーヴァーの方が好きだな。

                             (710P/読書所要時間7:30)