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フリーター、家を買う。  (ねこ4匹)

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有川浩著。幻冬舎

「母さん死ぬな??」へなちょこ25歳がいざ一念発起!? 崩壊しかかった家族の再生と「カッコ悪すぎな俺」の成長を描く、勇気と希望の結晶??  商社勤務「経理の鬼」の父が原因で、重度の鬱病に罹った母。入社三カ月で会社が嫌になって退社しブラブラしていた25歳の俺が、名古屋の病院に嫁いだ姉にどつかれて、ある日、ふと目覚めた。もしかして、俺カッコ悪すぎ??そこからへなちょこ若者の成長が始まる。崩壊しかかった家族の再生と、主人公の成長過程を優しく描く、家族愛と希望に満ちた一冊。もちろんベタ甘ラブもあり。不況を生きるすべての老若男女に贈る、大ベストセラー『図書館戦争』『阪急電車』の著者による長編小説です。 (あらすじ引用)


有川さん待望の新刊です。
8月は怒濤の新刊ラッシュ。予算と評判を考慮し伊坂さんを諦めて同じく大好きな有川さんを購入しました。表紙とタイトルの爽やかさ、軽さとは反面、重たい内容だと言う情報を得て。別に有川作品なら軽いものでも構わないのですけどね^^しかし予感は当たり、ここ最近の有川長編では1番のお気に入りとなりました。もう自衛隊作家の看板降ろしても大丈夫じゃない?

さて、ストーリーはあらすじ通り、ヘタレフリーターだった誠治が母の鬱病を機に真面目に就職を考え、貯金と母の看病に励み、一戸建てを購入するというサクセスストーリー。個人的に、この25歳という主人公の年齢設定は上手いと思います。20前半だとここまでの成長はリアリティに乏しい、しかし20代後半だとどんどん条件も厳しくなる上、内面の成長も難しい。少し気になったのは、「フリーター」という言葉の境界。一口にフリーターと言っても、レギュラーで働いて仕事に責任感を持って生計を立てている方はたくさんいます。ヘタレ時代の誠治の状態を自分はそういう人達と一括りにはしたくはない。真面目にアルバイトを始めた誠治のような人がやがて就職し、2、3年勤め家のローンを組むというのはそれほど世の中で起こり得ていない事ではないと思いますが。(まあ、有川さんはそんなおつもりではないと思いますが)

さて話は変わり、この物語でもう一つ重要なのが、鬱病に罹った誠治の母の背景です。ご近所間のいじめ、家族の無理解。。読んでいて本当に身に詰まされます。自分も経験上、こちらの正論や誠意が伝わらない理不尽さ、その無力さを少しはわかっていると思うからです。姉の亜矢子の”正しさ”はそういう意味では読んでいてキツい。それが母でなくて父と誠治に向けられたものなのでいいのですが。父の誠一は読んでいてイライラさせられる典型でしたが、だんだん”可愛いことあるじゃん”と好感を持つまでに。
そして誠治についてですが、彼の成長は本当に著しいです。こりゃ完全に自分よりしっかりしてるわ^^;元々素質があったので、一度スイッチが入ったら早いですね。

(※ここから少しだけですが内容に触れます、未読の方はご注意^^)

                             (307P/読書所要時間3:00)


全体的にかなり好感触でしたが、欲を言えば、今回だけはベタ甘要素は自分は要らなかった、かな^^;(たぶん、他の読者はそんなことはないと思います!)ヒロイン役の千葉ちゃん自身は好きでしたが(新入社員、豊川も^^こいつ、採用かよ!と笑った^^;)。ちょっと今回ばかりは猫のエピソードや恋の過程がベタすぎて、自衛隊の出動を願ってしまった(笑)。有川さんの恋愛って、雑草料理とか阪急電車とか、ちょっと変わった設定が多かったでしょ。まあ、土木会社内恋愛というだけで変わってるけどね^^あと、お母さんの笑顔、最後に見たかったな。有川さんだし、それぐらいやってもご都合主義万歳、じゃないかな。