すべてが猫になる

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私の男  (ねこ2.8匹)

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桜庭一樹著。文藝春秋

優雅だが、どこかうらぶれた男、一見、おとなしそうな若い女、アパートの押入れから漂う、罪の異臭。家族の愛とはなにか、超えてはならない、人と獣の境はどこにあるのか?この世の裂け目に堕ちた父娘の過去に遡る―。黒い冬の海と親子の禁忌を圧倒的な筆力で描ききった著者の真骨頂。 2007年 第138回 直木賞受賞作。(あらすじ引用)


読まなきゃ良かったかな。。。

桜庭さんは文章が素晴らしく良い作家さんです。特に本書は冬の海の冷たさと、花と淳悟の暮らす狭いアパートの匂いたつような淫靡さがリアルで。うわあ、直木賞って感じがするなあ、文学ってこんなんだよなあ、という雰囲気に酔えます。別に近親相姦はいけませんとか、気持ち悪いとか、そんな事を言われる為にある作品ではないのもわかってます。この作品の良さ自体は理屈で理解出来てはいるつもりです。

でも、自分は読んでいて気持ちが悪いんです。。
表現や文章になまじっか魅力があるため、その生理的嫌悪感が倍になった気がします。文章に魅力があるから引き込まれるとか、作者の力量で読まされてしまう、とかいうこともなかったほどに、ただただ花と淳悟の性が読んでいて苦痛でした。背徳の美学でも歪んだ絆でもない、これは何かが欠けざるを得なかった者達の、その環境の犠牲者でしょう。
構成は時系列の降順で進んで行くので、最後の”二人のはじまり”の章でなにかそんな自分の感情を覆すものがあればまだ良かったのですが。別に事件が起きるとかそういう事ではなく。

自分が未熟なものでストレートにしか書けなくてすいません。今回は自分の意外な普通さを素直に受け入れます。

                             (381P/読書所要時間4:00)