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ジョーカー・ゲーム  (ねこ4.2匹)

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柳広司著。角川書店

結城中佐の発案で陸軍内に設立されたスパイ養成学校“D機関”。「スパイとは“見えない存在”であること」「殺人及び自死は最悪の選択肢」。これが、結城が訓練生に叩き込んだ戒律だった。軍隊組織の信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は、当然、猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く「魔王」―結城中佐は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を挙げ、陸軍内の敵をも出し抜いてゆく。東京、横浜、上海、ロンドンで繰り広げられる最高にスタイリッシュなスパイ・ミステリー。(あらすじ引用)


うひょ、オモロかったです^^v
いかにも柳さんらしい題材でありつつ、これまでどんな本でも読んだ事のないなんともいえない格好良さ 。スパイものということで若干引いておりましたが、結城中佐の独特のキャラクターとスパイ達それぞれの芯の通った任務遂行ぶりに手に汗を握って読んでしまいました。とは言っても、ハラハラする派手なアクションやドラマじみた無駄な感情表現などはありません。それが人間を描けていないという訳ではなく、世界観を造り上げているのですよね。確かに、それぞれのスパイ達の個性や人間らしさ等は後ろに回っていますが、彼らの信念や能力の高さ、レベルの高い駆け引きなどなど、見所がありすぎて困るほどです。

彼ら”D機関”のスパイ達が受ける訓練なども一々面白い上、実践でそれを応用するシーンなどは感心するばかり。会話でさりげなく相手の心理を読み取る方法や、二重スパイの見分け方、敵を陣地内に取り込むその手段、頭脳戦のオンパレードです。人間心理を巧みに操るのも意外でしたね。
結城中佐が時々彼らにヒントや合図を送るのですが、それに気付く彼らも凄い。ていうか、こんな七面倒な事しないではっきり助けてやればいいのにとも思いますが^^;実は彼らを信頼している=彼らのプライドを守っている、と考えられますね。

とにかく大満足でした。これは柳作品でもかなり上位だぞ^^
余談ですが、表紙がブロッケンJr.そっくりで目が離せません。。。