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暗黒館の殺人  (ねこ4.2匹)

綾辻行人著。講談社文庫。


蒼白い霧の峠を越えると、湖上の小島に建つ漆黒の館に辿り着く。忌まわしき影に包まれた浦登家の
人々が住まう『暗黒館』。当主の息子・玄児に招かれた大学生・中也は、数々の謎めいた出来事に
遭遇する。十角塔からの墜落者、座敷牢、美しい異形の双子、そして奇怪な宴……。著者畢生の
巨編、ここに開幕!(第一巻裏表紙引用)

20.1.15 再読書き直し。

 

長い…。

 

熊本県の山中にそびえる暗黒館を訪ねる途中に事故に見舞われ、その後十角塔から落下し全ての記憶を失った河南。初代当主玄遥の孫、玄児の招きで暗黒館に滞在することとなった青年(中也)も記憶を失っていた。玄児は9歳までの記憶がなく、それまでは塔上の座敷牢に幽閉されていたという。「ダリアの宴」なる不気味な食事会に参加した中也は不審を隠せないが、そんな中使用人の老人が船で岸に激突し重傷、その後何者かに絞殺されてしまう―。

 

せむしの使用人やシャム双生児、早老症の少年、正気を失った母親たち。異様な人々と記憶を喪失した人間が混在し、怪しい雰囲気という意味ではシリーズ随一と言ってもいいだろう。殺人自体は長丁場の割に2件と少ないが、屋敷の仕掛けや特殊な環境がそれを何倍も引き立てている。モノローグに何らかの仕掛けがあるのは予想つくんだけど、パターンの斜め上いかれた。これは館シリーズを全部読んできたファン向けかもしれない。殺人トリックというよりも、動機と登場人物たちの秘密の真相のほうに重きを置いているのでドラマ性も高い。個人的にはかなり好み。