すべてが猫になる

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スペース  (ねこ4.3匹)

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加納朋子著。東京創元社クライム・クラブ。


クリスマス・イブを駆け抜けた大事件のあと、大晦日に再会した瀬尾さんと駒子。ふたりのキーワード
は”謎”。「ななつのこ」「魔法飛行」に続く待望の駒子シリーズ第三弾。手紙に秘められた謎、
そして書かれなかった”ある物語”とは……。(あらすじ引用)



読み終わった後に、表紙の美しさと内容のマッチングに感動し、思わず本を抱きしめたくなる。
それは傑作だ。

この年頃の女の子の嫉妬心や虚栄心を見事なまでに表現出来ているし、一見ほのぼ~のとした
キャラクター陣が内心で”突っ込む”そのリアルさと本音に思わず微笑みすら出てしまう。
中でも注目したのは彼女たちの中に棲む微妙な恋心。ある年齢を過ぎた女性なら意識せずにいられない
結婚や性の欲望にまだ穢されていない、ぴかぴかの初恋の読んでいてくすぐったくなる甘酸っぱさ。
作品にあるように、お互いに気があって、本人達もそれを了解していて、その気になればいつでも
そういう関係になれそうなものなのに絶対に壊れない距離感。成長途中の彼女たちは、
今が幻想である事を知っているのかもしれない。女性が大人になるのは早いと言うが、
それでもまだ未熟さだろうか、臆病からだろうか。大切な物が壊れて行く、大切な人が去って行くのが
人生だと、その荒野へ足を踏み出すのには若すぎるのかもしれない。

ブログの交流を最愛の趣味としている自分にとっては、共感出来る要素が多々あった。
こちらは手紙ではないので情緒には欠けるが^^;
しかし、越えたくない壁や守りたい距離感というのは確かに存在する。
作品の登場人物のような展開は確かに理想だが、「今がその時」のようなゆったりとした
年月の流れによる結果は、決して理想でもないんじゃないか。


ミステリーとしての面白さも本書が抜群だった。難を言えば、ちょっと”手紙”が
長すぎて辛いかも。だんだん、「人の手紙を勝手に読んでいる自分」という罪悪感が
生まれるぐらいの長さは十分にあります^^;