すべてが猫になる

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俺ではない炎上  (ねこ4匹)

浅倉秋成著。双葉社

ある日突然、「女子大生殺害犯」とされた男。 既に実名・写真付きでネットに素性が曝され、大炎上しているらしい。 まったくの事実無根だが、誰一人として信じてくれない。 会社も、友人も、家族でさえも。 ほんの数時間にして日本中の人間が敵になってしまった。 必死の逃亡を続けながら、男は事件の真相を探る。(紹介文引用)
 
浅倉さん二冊目。「六人の嘘つきな大学生」が良かったので、話題になっていたこちらも。炎上逃亡ミステリーということで、こういう現代的な題材がお得意な作家さんのよう。
 
ハウスメーカー勤務・山縣泰介部長のツイッターが炎上した。何者かが10年前から本人になりすましアカウントで投稿を行っていたらしい。そのアカウントではどう見ても女性を殺害したばかりのような男の映像が流れており、瞬く間に拡散される。逃げ場を失った山縣は決死の逃亡劇を繰り広げるが…。
 
最初は、逃げたらますます怪しくなるのにと山縣の行動にイライラしてしまったが、状況が明らかになるにつれてなるほど、これは自分の身に降りかかった場合自分でもどうしようもないかも、、と思ってしまった。それぐらい巧妙で、言い訳が出来ないぐらいそれは「本人のアカウント」なのだ。10年前から、芸能人でもない一般男性に執拗な罠を仕掛けていた人物がいるというだけでもう恐怖どころではない。本人は「人望がある」と自己評価していて恨まれるような覚えはなさそうだが、関係者に接触すると出るわ出るわ、山縣がいかに嫌われていたかという証言が…。炎上、殺人容疑よりも本人はこっちのほうがキツそう。まあそういうわけで山縣には好感が持てなかったのだが、一番イライラさせられるのはやっぱり「正義警察」と呼ばれるネット民たちだよね。こういう人たちって、客観的に自分を眺めたりできないのかな。
 
まあそういうわけで終始リアルに腹立たしく不快な内容を含んでいるわけだけども、ミステリー的にも仕掛けがあったりアクション的なスリルがあったり、最後にはほっこりしたりとなかなか面白かった。またこういう系統が出たら読んでみたい。