すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人  (ねこ4.4匹)

早坂吝著。光文社。

「あれだけ警戒しながら読んだのに完全に騙された。まさか、そうくるとは。」ーー有栖川有栖   女名探偵の死宮遊歩は迷宮牢で目を覚ます。姿を見せないゲームマスターは「六つの迷宮入り凶悪事件の犯人を集めた。各人に与えられた武器で殺し合い、生き残った一人のみが解放される」と言うが、ここにいるのは七人の男女。全員が「自分は潔白だ」と言い張るなか、一人また一人と殺害されてゆく。生きてここを出られるのは誰なのか? そしてゲームマスターの目的は? ふたつの事件の交点が見えたとき、世界は反転する。 読者を挑発し続ける鬼才の超絶技巧ミステリ!(紹介文引用)
 
表紙、好み。
ってことで、大ファンの早坂さんの新刊。またまたまたやってくれた、大満足。
前半は餓田なる人物が勘違いの末身勝手に押田家なる人物の家に侵入し一家三人を惨殺するというなかなかのハード展開。読んでいてキツいぐらい。中盤から、自称名探偵死宮なる人物が刑事に「迷宮牢殺人事件」の全貌を語り聞かせる章を随所に挟みつつ、謎のデスゲームが展開する。何者かが6件の迷宮入り事件の犯人たちを攫い、それぞれが使った凶器でお互いを殺させるというものだ。
 
ミステリを読みなれた読者なら、読んでいる間ずっと違和感や疑問が無意識に浮かびあがっていくと思う。自分も、なんかこのキャラの喋り方……とかしょっちゅう出てくる当て字に雰囲気作り以外のどんな意味が?とか引っかかりを感じてはいた。前半のしおかぜ事件だけにスポットが当たっていたのは???なども。で、次々と期待通りに意外な真相が明かされていき、露骨だった伏線に気付かなかった快感ったらない。迷宮牢がアレだったことは予想がついていたし(だいたいレジャーランドの迷宮、ってこうなってるイメージ)、あの語り手が実はそうだったことは分かるわけないよなあ~って感じではあるけれど、肝心のところ、作者が騙したかったのはそこじゃないというか。最後のページまで、完全にやられた。エンタメ小説としても面白いし、有栖川有栖さんの作品を上手に作中に盛り込ませていてファンとしてはニヤニヤできるし、とにかく最高。