すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

二百十番館にようこそ  (ねこ4匹)

加納朋子著。文藝春秋

「もう面倒見きれない。そこで一人で生きていけ」就活に挫折して以来ずっと、実家でオンラインゲーム三昧の日々を送る“俺”に転がり込んだ伯父さんの遺産は、離島に建てられた館を丸々一棟。なんと無職から一転して不動産持ち、これからは課金し放題だ!と浮かれて現地を下見に行った俺は、まだそれが両親からの最後通牒であることに気づいていなかった……。(紹介文引用)
 
20代も後半に差し掛かったネトゲ廃人、”刹那”は両親に捨てられ叔父から譲られた離島にある館に無理矢理引っ越すハメに。最初は絶望と反抗心しか湧いて来なかったが、ネットゲームを利用し徐々に”社会の落伍者”たちが同居するようになるとだんだん精神に変化が…。というお話。
 
私自身、ファミコンやらPSやらピグライフやらをちょこちょこ齧ってきたぐらいでソシャゲというものには一度も手を出したことがない。なので、刹那たちがやっているゲームの説明描写がサッパリ分からない。作品の特徴を挙げるなら、分かる人と分からない人との間に結構なアドバンテージがある作品ということになるだろう。が、次々発生する住人たちのピンチがあったり、最初は全然喋れなかったヒロや強面のサトシがだんだん打ち解けていったり、島のお年寄りたちと持ちつもたれつの付き合いが生まれていったり、母島と子島をつなぐジップラインを作ったりとワクワクする展開が続くのでだんだんと夢中になってしまった。
 
まあ、ご都合主義というか想像通りの展開になりすぎる感はあるんだよね。BJの前に、いつか産婦人科医じゃないとダメだ!みたいな事件が起きるんだろうな~~なんてことはすぐ予想がつくし。郵便局長の職にありつけたり。館の運営がうまくいきそうだったり。現実にこんなお伽噺があるなら、私だってこの役目やりたいよと思う。ゲームはやらないけど。まあ、それぐらい楽しそうで羨ましくて素敵な世界だったということ。誰だって本当は愉快な仲間に信頼されたり社会の役に立ったりしたいんだよ。でもそれがどうしようもなく遠い人もいるんだよね。こんなふうにトントン拍子に行けば夢だなあと思う。刹那たちは、腐っていても性根が悪くない。本当に処置なしつける薬なし、みたいなニートも世の中にはいるだろうから。。あとはせっかく表紙にもカワイイ猫がばばーんといるのだから、もっと活躍して欲しかったな。