すべてが猫になる

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発注いただきました!  (ねこ3.8匹)

朝井リョウ著。集英社文庫

桐島、部活やめるってよ』での鮮烈なデビューから10年。著者の元には様々な企業からの原稿依頼が寄せられた。原稿枚数や登場人物、シチュエーションなど、小説誌ではあまり例を見ないようなリクエストに、著者はどのように応えてきたのか!? 普段は明かされることのない原稿依頼内容と、書き終えての自作解説も収録。文庫化に際し、さらに1作品を追加。ある意味で「集大成」な作品集。(裏表紙引用)
 
てっきりエッセイ集というか解説集というかそのようなものだと思って読んでみたら、今まで様々な企業から依頼された短編を解説つきで寄せ集めた作品集だった。朝井さんの小説がたくさん読めるのは嬉しい。
 
アサヒビールや森永製菓、雑誌、アーティストのaikoなどなどたくさんのこういう依頼があるんだなあ、とまずそこにビックリ。自分が小説を雑誌では読まないので(目にすることもない)、小説雑誌以外でも小説家というのはこんなに色々お仕事が来るのだなあと勉強になった。朝井さんの人気あってのものもあるだろうけれど。名指しなのでね。どれも短編とショートショートの間ぐらいの文量なのでサクっと読めるのもいい。
自作解説?感想?は相変わらずユニークな朝井さんのキャラが立っていて楽しい。
 
印象に残った作品をいくつか。「蜜柑ひとつぶん外れて」こういうお店では醤油をこうする、とか雑誌に載っていたコーデを変えない、とか、決められた世界のルールよりも、自分を幸せにするためのこだわりを持つ人に惹かれる女性が良かった。「いよはもう、28なのに」今でもこういう上司におべっか使いまくり新人がお酒作りまくりの飲み会はあるのかしら。「清水課長の二重線」小文字と大文字を揃えるとか二重線は定規を使うとか仕事の基本を大事にするってお話、人が他人から影響を受ける流れが良かった。「贋作」は書き下ろしかな?少し長め。筆職人だかなんだか知らないけど、自分をプロデュースするために誰かを傷つけていることに気づきもしない人種のいやらしさがよく出ていた。でも主人公の奥さん、ちょっと痛々しいね。ピュアというかなんというか。
 
20作品収録されているので、必ずどれか心に響く作品があるのではないかな。軽く読むには深いものも多くて読み応えあり。