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名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件  (ねこ3.7匹)

白井智之著。新潮社。

病気も怪我も存在せず、失われた四肢さえ蘇る、奇蹟の楽園ジョーデンタウン。 調査に赴いたまま戻らない助手を心配して教団の本拠地に乗り込んだ探偵・大塒は、次々と不審な死に遭遇する。 奇蹟を信じる人々に、現実世界のロジックは通用するのか? 圧巻の解決編一五〇ページ! 特殊条件、多重解決推理の最前線!(紹介文引用)
 
白井さん3冊目。次々と手を出したいような作風の作家さんではないので少し抵抗があったのだが、ランキング1位だったので押さえてみた。
 
奇抜な特殊設定モノが多い(多分)白井作品にしては、(あくまで、白井さんにしては)マトモな方だったと思う。おなじみのエログロシーンがほとんどなく、けったいな固有名詞がほぼ皆無。しかし前日譚や発端からしてなかなか濃い状況説明や展開が用意されており、それを踏まえて本ネタのガイアナ共和国ジョーデンタウン訪問の章へ突入しなければならない。登場人物はほぼカタカナで似たような立場の人物が複数、人数自体もうんざりするほど多く、表紙裏の登場人物紹介を見ただけで正直ゲンナリした。
 
助手の有森りり子を助け出すため友人とジョーデンタウンを訪れた主人公の大塒は連続殺人事件に巻き込まれ、仲間たちも次々と非業の死を遂げる。いつもりり子にお株を奪われていた大塒が奮起し、最後には自分の力で事件を解決する。...のだが、この推理がとにかく二転三転しまくる。ただでさえ難解で複雑なロジックであるのに、「実はそうではなく」がひたすら続くのに正直ウンザリ。解決したあとでさえ、後日譚として新たな真相が浮かび上がったりするのだ。怪我や病気が「見えない」団体版と、その条件に該当しない外部版の推理が用意されているのがこの作品の凄みだと理解はできるものの、もう最後あたりでついていけない。どんな真相でももういいから解答を早く提示してくれ、、という気持ちでいっぱいになった。
 
個人的には、白井氏の特色が薄かったことも加え今まで読んだ作品のほうがミステリー的カタルシスはあった気がする。とにかく読みづらくてしんどい、レベルの高さについていけない。こんな感想ですいません。