すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

悪と無垢  (ねこ3.8匹)

一木けい著。角川書店

彼女は無邪気に、優雅に、意味もなく、他人を不幸に陥れる。 「逃げなきゃ。この女のそばにいるのは危険すぎる」 新人作家、汐田聖が目にした不倫妻の独白ブログ。ありきたりな内容だったが、そこに登場する「不倫相手の母親」に感情をかき乱される。美しく、それでいて親しみやすさもある完璧な女性。彼女こそ、聖が長年存在を無視され、苦しめられてきた実の母親だった。ある時は遠い異国で、ある時は港の街で。名前も姿さえも偽りながら、無邪気に他人を次々と不幸に陥れる……。果たして彼女の目的は、そして、聖は理解不能の母にどう向き合うのか?(紹介文引用)
 
初読み作家さん。べるさんのところで紹介されていて興味を持ったので読んでみた。なんでも、イヤミスを通り越してのホラーなんだとか。
 
連作短篇集かと思って読んでいたらどうやら全部繋がっているらしい。どのお話にも英利子という「稀代の嘘つき」が土地や姿や名前を変えて登場し、巧妙に誰かを陥れる。英利子の怖いところは、全く罪悪感がないところと、何を目的としているのか分からないところ。いっそ人を不幸にしたいとかこの世に恨みがあるとか(なんか幽霊みたいな言い回しになったが)、そういう分かりやすい動機があるほうがまだいい。しかも、英利子の息子も姿を変えて、英利子の援護射撃??みたいなことやってる感じなんだよね。まあやられる側にもそれ相応に性格の問題があるのだが。。主婦と不倫して姿を消したり。不気味すぎる。。舞台がタイ?になったりするし。
 
不倫話ばっかり続いたと思ったら。後半から英利子の同級生やら子どもやらが出てきて、いかに英利子が嘘つきか、関わってはいけないやばい人間かが赤裸々に語られていくっていう。英利子だけじゃなくて、結構ムカムカさせられる人間がいっぱい出てくるのよね。で、年月が経って色んなところで色んな今まで出てきた人が繋がってくるっていう。。考えるとゾっとするけど、ちょっと人と人が数年後英利子の周りで繋がりすぎじゃない?
 
まあそんなこんなで、最後は全然まとまったり腑に落ちたりしないので「なんだったんだ」という読後感が強い。イライラするし、ゾっとするし。まあそれが好みだし読む手が止まらない面白さだったので読破しようとは思うが、世の中には自分の知らない色を出す知らない作家さんがいるもんなんだな。