すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

だからダスティンは死んだ/Before She Knew Him  (ねこ3.8匹)

ピーター・スワンソン著。務台夏子訳。創元推理文庫

ボストン郊外に越してきた版画家のヘンと夫のロイドは、隣の夫婦マシューとマイラの家に招待された。食事後にマシューの書斎に入ったとき、ヘンは2年半前に起きたダスティン・ミラー殺人事件で、犯人が被害者宅から持ち去ったとされる置き物を目にする。マシューは殺人犯だと確信したヘンは、彼について調べ、跡をつけはじめるが……。数人の視点で語られる物語は読者を鮮やかに幻惑し、衝撃のラストへとなだれ込む。息もつかせぬ超絶サスペンス!(裏表紙引用)
 
ピーター・スワンソン4冊目。
人名シリーズ。本作はこのミス海外編第2位とのこと。「真相が分かってからがこのミステリの真骨頂」らしい。
 
ボストンの片田舎に引っ越してきた版画家のヘンリエッタ&夫のロイドは、隣人のマシュー&マイラ夫妻の夕食会に招かれた。そこでヘンが目に止めたのは、かつての殺人事件の被害者ダスティン・ミラーのフェンシングのトロフィー。夫のマシューは殺人犯なのか?ヘンはマシューの行動をさぐり始めるが、ヘンが躁うつ病を患っており過去に殺人未遂を起こしたことから、警察にも夫にも全く信用されない。ヘンはマシュー夫妻に接近禁止命令を申請されてしまうが、マシューのほうからヘンに近づいてきた。
 
メインの語り手・ヘンが全く信頼できない語り手であると同時に、殺人犯マシューも同じ条件だということが物語のキモ。ヘンの夫やマシューの妻、マシューの弟リチャードの視点が紛れるので疑問が拡散されてしまうのがうまい。実際、リチャードの章には違和感しかないのでほとんどの読者はこの真相に気づいてしまうと思うが…。売り文句の通り、そこからが作者が本当に描きたかったことなのだろう。正直ゾクっとした。犯人ってわけでもないんだろうが、そこでやっとタイトルの意味が噛み締められるというか。
 
面白さは今まで通りだしよくできた作品だと思うが、書いた通り真相はすぐに分かってしまうのでその分だけ評価を下げた。好きは好きかな。