すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

新宿なぞとき不動産  (ねこ3.8匹)

f:id:yukiaya1031jp:20210309163450j:plain

内山純著。創元推理文庫

新宿の不動産会社で働く、知識はあるが駆け引きが苦手な賃貸営業マン・澤村聡志。ある日、優秀な後輩・神崎くららがパートナーになって以来、先輩使いが荒い彼女に振り回される毎日に。さらに担当する物件にはおかしな謎がつきまとって…新宿に住む人々の謎を二人の知識とひらめきで解決する、心あたたまる不動産ミステリ。(紹介文引用)
 
初読み作家さん。
面白かった!これ好き。
なんとなくネットで偶然見かけて、好みっぽそうだったので。不動産業界ってなんとなく興味がある。舞台はタイトル通り新宿。ツノハズ・ホーム本社賃貸営業部二課所属の営業マン・澤村(成績は底辺、真正直、消極的、整理整頓、事務が得意、バツイチ)と
多摩支店から異動してきた神崎くらら(美女、成績ナンバーワン、小悪魔、よく機械を壊す)のコンビが織り成す不動産ミステリー。
 
「大家の事情」
築50年のコーポフタボシの大家・マサさんが、いきなり担当の澤村に黙って入居者を退去させクリーニング業者まで引き入れていた。突然冷たくなったマサさんに何が?
こういう昭和時代のようなあたたかい人間関係って今はあまりないんだろうなあ。澤村1人で推理するのでえらい。そのあとくららに結構酷いことされるが。。
 
「入居者の事情」
澤村の、くららに対しての心の呼び名が「デビル」になってる笑。澤村の客からおかしなクレームばかり寄せられる。布団の中に宇宙人?管理人を騙った張り紙?まあ、上の部屋の騒音というのもあるが。客全員から名前を覚えてもらえてない澤村あわれ。。
仲介業者が、騒音の主の部屋に確認に入ったりするんだね。ビックリ。クレームは全部裏の理由があるなどして解決。悲喜こもごも。澤村の正直すぎるいい人ぶりが仕事で生きることもあるのね。
 
「入居申込人の事情」
同業者に横入りされ、澤村の扱っている物件がバッティング。しかも相手方の申込人は年収1千万で、近々結婚予定だという。圧倒的に澤村側が不利だが…。
このカップル、なんかあやしいと思ったんだよね。。今時こんな絵に描いたような理想の女性はいませんて。澤村が正直に話したことって良かったのか悪かったのか分からないけれど。
 
「その土地の事情」
くららから譲ってもらった未亡人の屋敷問題で、いよいよ本契約か?という時、くららがナイフを持った不審者の人質に!謎の隠し扉から色々な人間関係が暴かれたり、今までの登場人物が総出演したりとにぎやかな最終話。未亡人の夫がやったことって、やはり一生恨まれても仕方ないよね。。
 
以上。
主要キャラクターがまさに堂に入った「割れ鍋に綴じ蓋」コンビなので、2人の会話だけで楽しめた。喫茶店まるものマスターもなんだか笑えるし。情けない澤村や仕事がバリバリできて男を顎で使うくらら、嫌いな人は嫌いだと思うけど、2人とも芯にあたたかいものがある感じがして自分は気に入った。不動産業界の裏側もいろいろ覗けて面白かったし、ミステリーとしてもドラマとしてもなかなか読ませる感じ。タイトルや各章のタイトル、表紙をもっと工夫すればもっと読まれるんじゃないかなあ。世間の人気作品となんら遜色ない魅力があると思うので、なんかこれだともったいない。