すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人  (ねこ3.6匹)

f:id:yukiaya1031jp:20210314163706j:plain

歌田年著。宝島社文庫

第18回『このミステリーがすごい! 』大賞・大賞受賞、読書メーター「読みたい本ランキング」第1位の作品が、待望の文庫化! どんな紙でも見分けられる男・渡部が営む紙鑑定事務所。ある日そこに「紙鑑 定」を「神探偵」と勘違いした女性が、彼氏の浮気調査をしてほしいと訪ねてくる。 手がかりはプラモデルの写真一枚だけ。ダメ元で調査を始めた渡部は、伝説のプラモデル造形家・土生井(はぶい)と出会い、意外な真相にたどり着く。 さらに翌々日、行方不明の妹を捜す女性が、妹の部屋にあったジオラマを持って渡部を訪ねてくる。 土生井とともに調査を始めた渡部は、それが恐ろしい大量殺人計画を示唆していることを知り――。(紹介文引用)
 
初読み作家さん。19年度「このミス」大賞作。
このミス大賞ものは絶対と言っていいほど合わないのでほとんど手を出さなくなってしまったのだが、こちらは珍しく食指が動くタイトルだったので読んでみた。
 
まず、文章はとても読みやすいと思う。主人公渡部が紙鑑定士という聞きなれない職業なのも興味を惹かれる(実際にはこういう職業はないらしい)。「紙鑑定士」を「神探偵」と読み間違えてやって来た女性の人探し依頼を本当に受けちゃうのも面白い展開で、さらにもう1人の探偵役土生井がプロモデラーだというのも少々変わっている(厳密に言えば探偵役は土生井で渡部は動き回るワトスン役))。最初に手がけた事件が短編ふうに終わるので、この感じで行けばめちゃくちゃ高評価だったのだが…。残念なことに、メインストーリーである事件のほうが結構ぶっ飛んでいてついていけなかった。
実際に蓋を開ければ歴史に残るぐらい衝撃的な事件で、それを紙鑑定士とプロモデラーが暴く、っていうのはあまりにも荷が重くないか。元妻の真理子がなかなかに「飛んでる」女性である上、依頼人の晴子がかなり土生井の人生に食い込んでくるので、そういうキャラ立ちゆえのコミカルさが事件とアンバランスでのめりこめなかった。犯人の人格がうんぬん、ってなっちゃうと何でもありになるしなあ。。最後も二時間サスペンスみたいな変な盛り上がり方しちゃうし。
 
なにより、紙鑑定と事件やストーリーが全然関係なかったのがイタイ。けど、エンタメとして軽く読むには光るものもあるし、決して悪い作品ではなかったかな。