すべてが猫になる

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クール・キャンデー (ねこ4匹)

若竹七海著。祥伝社文庫。書き下ろし。


中学生の渚の誕生日の前日に兄嫁が死んだ。そして、兄嫁の死亡時刻にストーカーも死んでいた。
警察は兄を疑っていて……。「兄貴は無実だ!あたしが証明してみせる!」


実は、最近まで女性の本格推理作家というものを敬遠していた私。
自分が女性なので、女性心理に共感するのが筋ってもんなんでしょうがどうも自分は
女性作家に多く見られる「洗練された、きれいにまとまった、心理に重点を置いた」文章が
合わないみたいで。「ええい、暗い、重い!うじうじ悩んでんと行動せんかい!……って
その行動じゃない!!(嫉妬で殺人とかうざい。現実の女性はもっとポジティブなもんです。
人殺しにポジティブになってどうする。)」
ってなっちゃうんで。
……って、そんな話がしたかったんじゃありません。

若竹七海さん。レンタル品につき画像がなくて残念ですが。(だって○○市立図書館、って表紙に
入ってたら映像として美しくない~。いくら本の虫の私でもそこまで身体を張って○○市図書館の
宣伝をする義理はありません)
って、また話それた。
ポップなタイトルの字体にさわやかな海、パステルカラーのさわやかイラストの表紙。まるで
恋愛小説。

そして、やはり文章もさわやか。改行にも積極的で、(まあ中学生が主人公ですからね)とても
殺人なんて起きそうにない。
しかし。
兄嫁がストーカーに襲われ、重体、自殺!?………でも文章はさわやか。
そのストーカーが何者かに殺された!?………でもやっぱり文章さわやか。
さらに大好きな兄が第一容疑者!!!!………なのにやっぱり文章さわやか。
およよ!?こ、これは!?好みかも!!!

重い内容を重く陰鬱に描き、登場人物を徹底的に悩ませ、読者に「読ま」せるのは容易。
専門用語をばらまき、難解な熟語を織り込ませ、読者に「考えさせるものがあった」と
言わせるのも。(それはそれで素晴らしいのですが)

この作品。あくまでそのさわやかな中、主人公の背負った重い現実、悩み、悲しみ、そして
愛情を表現できてしまっているなんて。そこにあるのは、一筋の救い、でしょうか。

ラストも驚愕なんですが、そのさわやかさゆえに絶望に帰結していないのは見事としか
言いようがありません。

…………………褒めすぎ?