すべてが猫になる

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殉教カテリナ車輪 (ねこ3.9匹)

飛鳥部勝則著。東京創元社。第9回鮎川哲也賞受賞作。


井村は、ある日ふと職場で初老の学芸員、矢部と親しくミステリ談義をする機会に遭った。
矢部は、密室で自殺した冴えない画家、東条寺桂の手記を読んでみてくれと言う。

ーーーーーで、手記。
東条寺の絵を見て図像学に興味を持った矢部が謎を解くべく東条寺の人となりにせまる。
やがて東条寺の人生、絵の謎、死因などが次々と明かされーー。


ーーーーみたいなストーリーか!?
文章は読みやすいし、雰囲気もある。多少展開が会話まかせになってしまっているのが
気になるけど、まあそこは許容範囲。

構造が新鮮。しかしコレを言ってしまうとネタバレなのではしょります。

「殉教」「車輪」の絵が挿入されているのでイメージは湧く。この絵がイマイチだと
矢部の行動に説得力がなくなるのでこの点は成功していると思う。

なんだか評価しにくいのは、その構造のうまさと、図像学→そしてミステリ、という
核の2点が独立しすぎている気がしたため。
入れ物となるトリックが見事に決まってしまっている分、箱の中がなんだかすごくありきたりな
ミステリに終止してしまったのがすごく残念ですな。
しかしこのトリックだけでも一読の価値あり。