ある嵐の晩、資産家男性が自宅で命を落とす。死因は愛車のエンジンの不完全燃焼による一酸化炭素中毒。容疑者として浮かんだ被害者の甥、日高英之の自白で事件は解決に向かうと思われたが、それは15年前の殺人事件に端を発する壮大な復讐劇の始まりだった。警察・検察、15 年前の事件の弁護も担当した本郷、事件調査を請け負う垂水、恋人の千春……。それぞれの思惑が絡み合い、事件は意外な方向に二転三転していく。稀代のストーリーテラーが満を持して放つ、現代日本の“リアルホラー”!(紹介文引用)
冤罪モノであり法廷モノ。貴志さんの新たな挑戦と見なしていいのかな。シリーズものでもなく、単行本475ページの大長編でもある(すべての上段に2センチ~ほどのナゾの空白があるので、実際には普通の単行本の350~400ページぐらいかもしれん)。帯にある「リアルホラー」の意味はわからない。まったくホラーではないと思うので。。
整備士の若者(日高)が叔父を遺産目当てで殺害した容疑で起訴されるのだが、この取り調べがまったく不当なものであり、担当刑事による暴力や脅迫の積み重ねによるウソの自白からくるものだった。日高の父親は15年前に殺人罪で逮捕され獄中死しており、父親の事件も警察による杜撰な捜査と脅しによる冤罪だったことを日高は確信している。日高は本郷弁護士や恋人の千春、語り手である元サラリーマンの協力者・謙介と共に力を合わせ、自身と父親の冤罪を晴らせるのか――。
長いけど面白いのは面白いので時間はかからなかったかな。
日高と父親が本当に冤罪なのかどうかは作者にしか分からないのでどちらかに肩入れすることは難しい。どの人物もあまりいい印象がないせいもあるが。。(作中光っていたのは井沢七子検事補ぐらいかな)とにかく読むにあたって日高を完全には信用しないようにした。敵役の石川検事がかなり嫌なやつなので、彼がやり込められる裁判シーンは胸がすく。でも面白さのピークはそのあたりかな。なぜコンビニ左から出たのかとかカメラに映っていない理由など、ミステリーならではのトリックや推理があるのかなと期待したが、なるほどこういう真相なら、、とガッカリした。終盤、もうだいたい目的も真相も予想がつくので長々と分かっているネタばらしを読まされるのもキツい。
あとこれ。文章力、語彙力共に高い貴志さんが蛙化現象、推しのアイドル、闇落ち、など一生懸命若い言葉を使っているのがちょっと痛々しかったなあ。。若い女性の描き方にもかなり問題があるような。。叔父の人格もブレブレだったし、、弁護士や千春の日高への思い入れも、日高との関係性の浅さと釣り合っていないようで違和感があった。
う~ん、まあ読み応えはあったしテーマも裁判モノも好みのジャンルなので読んで損したとは思わないが。。。人物描写が杜撰で人と人との関係性で何らかの感情を生み出す感じでもなかったので(東野さんのような)、、ああそうですかという感じの読後感。。。「雨月物語」で持ち直したと思ってたんだけどなあ。。