すべてが猫になる

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レディに捧げる殺人物語/Before the Fact  (ねこ3.8匹)

フランシス・アイルズ著。鮎川信夫訳。創元推理文庫

三つ子の魂百までという。リナは自分の性格を変えることができなかった。決定を先送りすること、思い込みで糊塗(こと)すること。崩壊の足音は遠く近く響いていたのに。八年に及ぶ結婚生活の果て、夫ジョニーの真実に気づいたそのとき……。人間の不可解な性(さが)と、その内心の葛藤。ヒッチコック『断崖』の原作としても知られる、アイルズ=バークリーの傑作犯罪心理小説。(別題『犯行以前』)(裏表紙引用)
 
アントニー・バークリーの別名義。3作あるのかな?どれも読んだことがないので、このたびの<名著復活>にて新たに出版されたことはおめでたい。
 
で、読んだ。
いやこれまた、すごい内容だったな。。自堕落で無責任で嘘つきで倫理観に乏しい夫ジョニーを愛する妻のリナ。よそに子どもは作るわ何度言っても競馬はやめないわ借金作りまくるわ、、しまいにはリナの父やジョニーの友人を金目当てで殺したのでは?と疑心暗鬼になり、1度は他の男のもとへ走りかけるも再びよりもど。抱きしめられて「愛してる」と許してしまう、というくだりが10回も20回も繰り返される地獄の物語。リナの優柔不断さや愚かさにイライラしっぱなしだけど、誠実で真面目で優しい男をふってこういうダメ男から離れないっていうのは全く理解できないわけでもない。
 
結局ジョニーはリナをも殺すのか?殺さないのか?やり返すのかやり返さないのか?果たして結末は?とドキドキしながら読み、想像のはるか上をいく結末へ。どっちがどっちかは書かないけれど、こういう殺し方があるのか。ミステリーというより文学の領域かも。
 
本来のバークリーの作風とは全然違うのだが、こういうジャンルもいけるんだなと感心。でもやっぱイライラしたな。。。。