すべてが猫になる

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アルファベット・ハウス/Alfabethuset  (ねこ3.5匹)

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ユッシ・エーズラ・オールスン著。鈴木恵訳。ハヤカワ文庫。

 

第二次世界大戦末期。英国軍パイロットのブライアンとジェイムズはドイツ上空で撃墜される。かろうじて生き延びたものの、ここは敵国の只中。追手から逃れるべく傷病者を搬送する病院列車に潜入した彼らは、ドイツ軍の将校になりすまして脱出の機会を窺う。だがナチスの精神病院“アルファベット・ハウス”でふたりを待ち受けていたのは、恐るべき危機の連続だった!“特捜部Q”シリーズの著者による類まれなる傑作! (裏表紙引用)

 


「特捜部Q」で人気の作者のデビュー作。

 

お互い親友同士のブライアンとジェイムズがドイツの病院列車に身を隠すところから物語は始まる。イギリス人である2人がお互い他人のふりをしてドイツの高級将校になりすまし、仮病を使い、脱出の機会を伺う。生きるために死体を走る列車から突き落としたり、他人が刺していた点滴針を自分に刺したり、爪の垢で血液型を記す刺青を入れたりと正気じゃないシーンがてんこ盛り。電気ショックだのビンタだの酷い虐待も相次いで、やはりというか軍人同士の暴力も蔓延していて読んでいてかなりキツイ。

 

それでもまあ病院列車=アルファベット・ハウスでの奮闘はまるでシドニィ・シェルダンばりのピンチに次ぐピンチの連続で面白かったのだが、片方が脱出に成功し片方が列車に置き去りにされ、そこから28年の歳月が経つ第二章からがどうにも読みづらくていけない。アルファベット・ハウスで恨みを買ったから復讐される、っていう単純な構造ではないし。お互いがお互いを誤解しているから全員が実態のない人間を慕い、恨んでいる感じ。

 

ラスト次第では胸をなで下ろせるかなと期待していたのだが、あまり理解できる終わり方ではなかったなあ。戦争が引き裂いた友情といえばそれまでなのだけど、もうあまりにも世界が違いすぎて虚しい。


当たり前のように手を出してしまったが、つくづく自分はジャンル>作家読みの人間なのだと思った。戦争ものではなくヒューマンドラマなのは分かるが、舞台や背負っているものがそれである以上、苦手な分野の範疇であることに変わりはない。まだミステリの要素でもあれば良かったけど。好きな人は好きな作品なのだとは思うが、やっぱ自分は特捜部だけでいいや。