すべてが猫になる

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木洩れ日に泳ぐ魚  (ねこ3.7匹)

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恩田陸著。文春文庫。

 

舞台は、アパートの一室。別々の道を歩むことが決まった男女が最後の夜を徹し語り合う。初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿―共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始める。濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。不思議な胸騒ぎと解放感が満ちる傑作長編!
(裏表紙引用)

 

 

へえ~、なかなかいいじゃない(←何様)。

 

本書は300ページ程の長編。登場人物はアパートで同居生活をしていた男女、ヒロとアキ。会話だけで進行する舞台劇のように、別れを決意した2人の最後の夜が交互の視点で語られる物語。最初は、恋人同士の別れ話かと思って読んでいたのだがどんどんと意外な事実や過去の事件との絡みが語られ、読む手が止まらなくなる。全部黙っていたほうがいいと思うのでその内容については端折るが、一見ドロドロとした人間関係でも韓流ドラマのような展開にはならないのが恩田作品らしい。淡々と語られる2人の関係がギリギリの緊迫感を持っている、と言えばいいかもしれない。

 

ヒロとアキの関係が一晩でどう変化していくか、というのも読みどころだし、過去の事件が紐解かれていく気持ち良さ(内容は暗いけど)もいい。恩田作品としては異例なのかどうか分からないが、比較的スッキリと終わるので満足感を得た。共感出来るほうの語り手=女性(アキ)の決断や心の変化が良かった。ヒロのほうはスッキリしたかどうか読者に委ねるってところだろうか。