すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

ジグソーマン/The Jigsaw Man (ねこ3.8匹)

イメージ 1

ゴード・ロロ著。高里ひろ訳。扶桑社ミステリー文庫。

 

マイケルは交通事故で妻と息子を亡くして以来、酒におぼれ職を失い、すさんだ路上生活を送っていた。そんな人生に幕を引くべく線路脇に佇んでいた彼の前に、白塗りのリムジンがとまる。現れた男が持ちかけてきた話は驚くべきものだった。「右腕を一本200万ドルで売らないか?」再生医療の権威マーシャル博士が縫合実験用の四肢を求めているというのだ。巨額の誘いに目がくらみ研究所に赴いたマイケルを待ち受ける未曾有の恐怖とは。先読み不能、問答無用の傑作ホラー登場! (裏表紙引用)

 


ウホ。初挑戦ものでコレは当たりだったな。作者のゴード・ロロはこの三作目でブレイクしたらしいがそれも納得。元々ホラー・アンソロジストとして有名な人らしい。この作品を読んで思い浮かべるのは勿論スティーヴン・キング。そしてB級らしさがディーン・クーンツ。映画「SAW」に「モロー博士の島」、「フランケンシュタイン」あたりをイメージさせればほぼ正解だろう。と言っても寄せ集めといった印象だけではなく、「こういう系統でこういう導入なら今後こういう展開になって・・・」という読者の想像のさらに上を行く展開が待っている。

 

導入は、ホームレスの人生を諦めた男が悪魔の誘いに乗って謎の研究施設へ連れて行かれるという定番もの。おいおい、少しは疑えよ。と思っても主人公らが博士たちの真の企みに気づいた時にはすでに遅く、決死の脱出劇が始まる。と、ここまでは想像の範囲内なのだが、ここからがちょっと違う。「え、本当にやっちゃうの?そんでこれからどうすんの?」という驚きと、今まで聞いたこともないその残酷でグロテスクな描写に翻弄されること間違いなし。こ、これ、映画じゃなくて良かった。見たら吐いてるわ。読みやすさに加えて圧倒的スケールのクライマックスまで怒涛のノンストップ展開。

 

残念だったのは、ラストのひと捻りがなかったこと。所詮はB級とは言っても、だからこそ、定石を外したオモロー展開が待っていても良かったと思うのだが。それだと壁本になりかねないか。