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悲しみのイレーヌ/Travail Soigne (ねこ3.9匹)

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ピエール・ルメートル著。橘明美訳。文春文庫。

 

異様な手口で惨殺された二人の女。カミーユ・ヴェルーヴェン警部は部下たちと捜査を開始するが、やがて第二の事件が発生。カミーユは事件の恐るべき共通点を発見する……。『その女アレックス』の著者が放つミステリ賞4冠に輝く衝撃作。あまりに悪意に満ちた犯罪計画――あなたも犯人の悪意から逃れられない。(裏表紙引用)

 


ルメートルの文庫新刊。どんどん出るので今ちゃんとついて行っておかないと溜まってしまってハードルが高くなりそう。ということでこれはデビュー作かつカミーユ・ヴェルーヴェンシリーズの第1弾。

 

カミーユ警部の特徴はその145cmの低身長にあり、その個性は彼の優れた資質を引き立てていると感じる。(と、言っても私とたいして身長変わらないんだがな^^;)同僚や部下、上司もカミーユの能力を認めていて、うまくやっている感じ。ここで極端に反発する層が居ても面白かったかも?そして最愛の妻、イレーヌは妊娠中。

 

今回発生した事件は、本当に書くのも怖気が立つほど残酷なもの。女性を惨殺するその手口がもう、今まで読んできたどんな本よりも醜悪でおぞましかった。サイコ系の犯人=インテリのイメージがあるのだが、この犯人もカミーユに手紙を送ったり遺体を「作品」と呼んだりと自己顕示欲が強い。カミーユ班の地道な聞き込みと推理で、犯人像は固まりゆくのだが……。ちょっと意外な犯人だったかも。よく考えたらこいつほどピッタリな人物いなかったかもね。とりあえず死んで下さい。

 

読む順番としてはこれを最初にするのが正解なのだろうけど。個人的には、「その女アレックス」から読んで欲しい。なぜならこれを最初に読んで、「早く他のが読みたい!」って思う読者がそれほどいるとは思えないんだ。グロいし、救いがないし、面白さの点でも「アレックス」の方が断然上。ただ、「アレックス」を先に読んだ人は本書の結末を知った上で読むことになる。犯人はわからないけどね。