すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

リカーシブル  (ねこ3.8匹)

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越野ハルカ。父の失踪により母親の故郷に越してきた少女は、弟とともに過疎化が進む地方都市での生活を始める。だが、町では高速道路の誘致運動を巡る暗闘と未来視にまつわる伝承が入り組み、不穏な空気が漂い出していた。そんな中、弟サトルの言動をなぞるかのような事件が相次ぎ…。大人たちの矛盾と、自分が進むべき道。十代の切なさと成長を描く、心突き刺す青春ミステリ。(裏表紙引用)

 


米澤さんの文庫新刊。実は米澤さんの作品はシリーズものより長編のほうが好きなので楽しみに読んだ。「折れた竜骨」以来かな?

 

中学一年生の少女、ハルカは母親と弟と共にある田舎町に引っ越してきた。ちょうど中学進学という区切りで引っ越しが出来たハルカは、転校生という奇異なものを見る目に晒されずに新生活を始められることに心からホっとしていた。友人も出来、順調に見えたこの街の暮らしに不穏な気配を感じ始めたのは、商店街で目撃した万引き事件だった――。というお話。

 

目立たないように、浮かないように一生懸命クラスで気を遣い、家では母の顔色を伺い、世話の焼ける弟の面倒をイヤイヤ見て――というハルカの性格とその状況にずっと胸が苦しかった。ハルカが、「辛い、苦しい」と言わない、自覚しようとしていないからかもしれない。家庭の事情も表面で見るより複雑で、さらに街の抱える問題と秘密が深刻に過ぎ、終始重苦しい雰囲気の漂う作品だった。

 

個人的に都市伝説というか伝承のような世界はそれほど好みではないので期待していたようなものとは違ったのだが、ややファンタジー的な要素がきちんと論理的に説明づけられたところは良かったと思う。母親に嫌悪感を感じていたので余計に。。。あれなら、ハッキリ言いたいこと言う人のほうがマシじゃないの。中学生に、働いて家にお金を入れるように誘導するなんて。それなら最初から引き取るなよ。と思った。それだけに、ハルカと弟の関係が変わっていくところは素直に感動した。すべてがいいところでは終わっていないし、モヤモヤが残らないこともないが、こういう作風なのかな。