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ジャイロスコープ  (ねこ3.8匹)

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助言あり〼(ます)――。スーパーの駐車場で“相談屋”を営む稲垣さんの下で働くことになった浜田青年。人々のささいな相談事が、驚愕の結末に繋がる「浜田青年ホントスカ」。バスジャック事件を巡る“もし、あの時……”を描く「if」。文学的挑戦を孕んだ「ギア」。洒脱な会話、軽快な文体、そして独特のユーモアが詰まった七つの伊坂ワールド。書下ろし短編「後ろの声がうるさい」収録。(裏表紙引用)

 

 

伊坂さんの文庫新刊。単行本の文庫化ではなく、アンソロジーや雑誌に掲載された様々な短編と書き下ろしを寄せ集めたという贅沢な内容。

 

「浜田青年ホントスカ」
この作品のみたぶん既読。蝦蟇倉市事件のアンソロジーで読んだはず。だが内容は銀河の彼方だったので普通に初読み感覚で。
「スーパーホイホイ」の駐車場で、相談屋の助手として一週間雇われた浜田青年のお話。色んな相談が持ち込まれて面白いな。稲垣さんの、とにかく他のもののせいにするアドバイスに笑った。ミステリ的な方向へ行くとは思っていなかったので意外な展開を楽しんだ。

 

「ギア」
バス?ワゴン?に乗せられた、見知らぬ同士の様々な人々。車内で突然始まる殺戮や、それと対照的にのほほんとしたセミンゴ講義など、わけのわからなさでは一級品。サラリーマンの語るスパムメールのくだりが好き。

 

「二月下旬から三月上旬」
これは読後一度戻らないと意味が分からなかった作品。ある仕掛けがあるのだが、タイトルが秀逸だ。坂本ジョンと語り手の青年が織り成す人生模様。

 

「if」
バスジャック事件が起きた。毎朝顔を合わせる顔なじみというメンツの中、男性だけが解放された。そこで犯人に歯向かえなかった後悔を、彼らはずっと引きずることになる。オチも爽快ながら、設定の妙が生きたお話だなあと。

 

「一人では無理がある」
事情があってクリスマスにプレゼントをもらえない子供にプレゼントを贈る会社と、ある子持ちの女性がストーカーに襲われる事件が交錯する。これを感動と言わず何を感動と言うのだ、というぐらい満足感を与えてくれる作品。

 

「彗星さんたち」
新幹線の掃除の仕事をしている人たちにスポットをあてたお話。最近、テレビでよく紹介されてるもんね。7分しかないけどその中で出来る限りの仕事をこなすという。乗客と清掃員と密接に絡み合うわけではなく、あくまで彼らの想像を膨らませてお話にしていくものなのだけど。個人的にはこれが1番好きな作品かなあ。

 

「後ろの声がうるさい」
書き下ろし作品。今までの作品をすべてリンクさせた物語。面白いし上手だとは思うのだけど、「あの時のあの人がここで登場!」とか結構飽きてきた自分なので、まあ、普通かなと^^;

 

以上。
長編ほどの「伊坂幸太郎を読んだ!」感はないが、それぞれ楽しめるかと。伊坂さんらしくないものも。純文学というよりエンタメ寄りなので手に取ってもらえやすいかな。