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悪魔と警視庁/The Devil and the C.I.D. (ねこ3匹)

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E・C・R・ロラック著。藤村裕美訳。創元推理文庫

 

 濃霧に包まれた晩秋のロンドン。帰庁途中のマクドナルド首席警部は、深夜の街路で引ったくりから女性を救った後、車を警視庁に置いて帰宅した。翌日、彼は車の後部座席に、悪魔の装束をまとった刺殺死体を発見する。捜査に乗り出したマクドナルドは、同夜老オペラ歌手の車に、ナイフと『ファウストの劫罰』の楽譜が残されていたことを掴む。英国本格黄金期の傑作、本邦初訳。 (裏表紙引用)

 


本格ミステリ全盛期に英国でアガサ・クリスティと比肩して人気だったというロラック。「悪魔と警視庁」という一見対照的な組み合わせに惹かれ読んでみた。首席警部マクドナルドの車の後部座席に置かれた悪魔の格好をした男の刺殺体。その側にあった、元オペラ歌手の車に刺さった楽譜。容疑者は元軍人から作家まで幅広いがお互いに知り合いで、マクドナルドが聞き込みに奔走する。このマクドナルドはかのベルギー生まれの自意識過剰男とは違い、至って真面目で頭脳明晰で誠実で無礼なところがない。

 

トータルとしては雰囲気、探偵共に好みであったのだが。なぜだろう、最初のインパクトが最後まで持続しなかった模様。優等生的解決というのか、本格ミステリと言うには地味極まりない。自分なら、クリスティが好きならこれも読んでみたら?と言う場合にこの作家は薦められないな。近いのはディクスン・カーかコリン・デクスターだと思うが、まあ実際人気だったと言うのだから。なぜ比べられたのかって言うと、ロラックって女性だったのね。それに一番ビックリ。題材やアプローチ、文体からして男性作家のイメージで読んでいた。マクドナルドがいい人だったので、他の邦訳も読もうかなとは思っている。