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銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件/The Tiny Wife (ねこ3.8匹)

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アンドリュー・カウフマン著。田内志文訳。東京創元社

 

 身長が毎日少しずつ縮んでいる!? 自分の心臓が爆弾になった!? 母親が97人に分裂!? 夫が雪だるまに変身!? 銀行強盗のせいで起こったさまざまな事件を描く傑作寓話小説。 (紹介文引用)

 


しまった、創元社だったら文庫になる可能性高かったな。

 

というわけで、タイトルが面白かったので読んでみた本。120ページほどの長編で、挿絵付きなので読了するのに40分もあれば十分だ。舞台はカナダの銀行から始まり、そこに居合わせた13人の客が銀行強盗に脅迫されるという出だし。「私は、あなたがたの魂の五十一%を手に、ここを立ち去ってゆきます。そのせいであなたがたの人生には、一風おかしな、不可思議なできごとが起こることになるでしょう。ですがなにより重要なのは――その五十一%をご自身で回復させねばならぬということ。さもなければあなたがたは、命を落とすことにおなりだ」そんな言葉と共に、強盗は彼らから一番大切なものを盗んで去っていく。個人的に面白かったのは体がキャンディになった女性や夫が雪だるまになってしまった妻。それぞれがそれぞれの不思議な困難を乗り越えたり乗り越えなかったり。主人公の妻は毎日身長が縮んでしまうが、夫婦のやり取りから普段の生活が甘えと妥協で成り立っていることに察しがつく。こうなって良かったのか悪かったのか、例えばこれが交通事故や突然の病だったらどうか。タトゥーが飛び出したり、お尻から現金が出たり――ここまでやらないとわからないのか?こんなに分かりやすい比喩を出さないと自覚できないのか?これはきっと、世の中の「あなたの大切な人はまだ生きている(恵まれている!)」人々への作者からのメッセージだ。