すべてが猫になる

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UFO大通り  (ねこ3.9匹)

島田荘司著。講談社文庫。

 

鎌倉の自宅で、異様な姿で死んでいる男が発見された。白いスーツを体にぐるぐる巻き、ヘルメットとゴム手袋という重装備。同じ頃、御手洗潔は、この男の近所に住むラク婆さんの家の前を、UFOが行き交うことを聞き及ぶ。果たして御手洗の推理はいかに!?「遠隔推理」が冴える、中編「傘を折る女」も収録。


久しぶりに読んだ島田荘司、しかも御手洗シリーズ。中編2編収録という私が読む初めての体裁。これがまあ久々に本格ミステリを読む楽しさというか、島田荘司の凄さというか、御手洗潔の可愛さを堪能させてくれるものだった。どちらも謎の真相に共通となる要素があり、しかも全く別の話ときている。子供騙しのようなキュートな謎でも論理は堅固。そのうえ石岡君との熱愛共演、さあ読んだ読んだ。


「UFO大通り」
頑固バカ低脳刑事が御手洗のとんでもない引き立て役になっているのが早々に笑える。ラク婆さんの証言は誰も鵜呑みにしないけれど、御手洗と石岡君が大真面目なのが嬉しい。こんな題材、普通思いつかないよなあ。UFOが庭で戦争やってましたなんて。でもその証言のすべてに理由と正体があって、殺人事件と結びつける手腕には感動すらおぼえる。この症状については昔読んだマンガでちょっと知識があった。なるほどねえ。御手洗の名言が出たのでここに記す。「ぼくにジェット・ヘリを一機くれたら、日本中から迷宮入りの事件なんてなくなるのにね!」


「傘を折る女」
あるラジオ番組に寄せられた、ある不思議な女の目撃談。それを聴いた石岡君は、早速御手洗に謎解きを持ちかける。うーん、白いワンピースを着た女が、夜、大雨の中傘を差さずに歩いていた。でも、手には傘を持っている。でも、その傘は折れている。なぜ折れているかというと、女がわざと車に轢かせたから。その理由は?うーん、こりゃすごい。事象を事実と心理面から突き合わせ、殺人事件と結びつけるとは!途中は女の犯行をなぞる形になったのでなーんだと思ったが、そこからまた新たな死体が。なぜ人を殺し逃げた女と別の女が白いワンピースを着て犯行現場で死んでいるのか??あの流れからこの結果に行く突くまでの論理が冴えすぎてびびる。


う~、どっちも良かった。改めて、本格ミステリというのは独特で孤立したジャンルだなあと思う。島田さんが特にそうなのかもしれないけれど。何よりも夢があって装飾まみれの中で、最後にその夢をどれだけ見事に破ってくれるか。やっぱりここは現実だったんだな、という説得力を書かせたらこの人の右に出る者は居ないんじゃないかしらん。