すべてが猫になる

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往復書簡  (ねこ3.8匹)

 

高校卒業以来十年ぶりに放送部の同級生が集まった地元での結婚式。女子四人のうち一人だけ欠けた千秋は、行方不明だという。そこには五年前の「事故」が影を落としていた。真実を知りたい悦子は、式の後日、事故現場にいたというあずみと静香に手紙を送る――。


往復書簡のみで綴られた、三篇収録の中篇集。

 

「十年後の卒業文集」
外国暮らしの悦子から、十年ぶりに届いた手紙。最初は和やかな近況報告から始まり、それが徐々に差出人は本当に悦子なのか、過去の友人の事故は本当に事故なのかなどの駆け引きに形が変わって行く。女同士の本音とかが明るみになってなかなか嫌らしい内容なのだけど、真相が明らかになると最初の和やかさに引き戻される仕組み。変装のくだりは有り得ない、普通気付くだろと思わなくもないが、表面的なイメージほど誰も悪い人じゃなかったというのは想像外。手紙だけで真相や事柄が判明していくのもなかなか面白いね。


「二十年後の宿題」
定年退職し、闘病入院中のかつての恩師から、ある6人の生徒の近況を調べて教えて欲しいという手紙が届いた。調べて行くうちに、その6人が二十年前に起きた水難事故の関係者だとわかり。。
捻じ曲がった考えの人間が出て来たり不穏な空気が漂っていくあたりは湊さんらしい。でも、最悪の結果が待ち受けているのかなと思わせて、実はあれは悪い人じゃなかったりという一篇目と同じパターン。これもまた、一人の人物の正体にムリヤリ感はある。が、筋は通っているのでまあいいか。でも、意外性からは遠のいたね。


「十五年後の補習」
今回は、エアメールでのやり取り。国際ボランティアで二年間某国に赴任中の男性と、彼を待つ女性のラブレター。なかなかのバカップルぶりが微笑ましい(笑)。作品の中では事件が一番大きいかなと思う。
カップルが過去に体験した恐ろしい事件。これがエアメールを通じて、裏に潜んでいた真相があぶりだされる。。ショッキングな内容ではあるけれど、これまたちょっと最後はあたたかい気持ちになれる。個人的には、最後そこまでひねらなくても充分だったのだけど。これが一番好きかな。


以上~。

 

湊さんにしては毒の薄い(あくまで、湊さんにしては)、破滅や絶望に向かって行かない物語ばかり。うーん、満足ってほどでもないけど、私にはこれぐらいが楽しめるかな。こういう方向性で今後行ってくれても全然構わないぐらいには。