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奇面館の殺人  (ねこ4.2匹)

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綾辻行人著。講談社文庫。

奇面館主人・影山逸史が主催する奇妙な集い。招待された客人たちは全員、館に伝わる“鍵の掛かる仮面”で顔を隠さねばならないのだ。季節外れの大雪で館が孤立する中、“奇面の間”で勃発する血みどろの惨劇。発見された死体からは何故か、頭部と両手の指が消えていた!大人気「館」シリーズ、待望の最新作。(上巻裏表紙引用)
 
20.1.28再読。記事がなかったので当時の日付で投稿。
 
館シリーズ第9弾。
暗黒館の後だから上下巻でも短く感じるな。
 
鹿谷門実は、同業者の駆け出し作家・日向京助の頼みで日向になりすまし東京の奥深い田舎に建つ奇面館を訪れる。これもまた建築家中村青司の手による建造物だった。奇面館当主とだいたい同じ生年月日の人間ばかりが集められ、主人の前では仮面を被らなければならないという奇妙な会合。そして翌日の朝、奇面の間で主人が首なし死体となって発見された。宿泊客は全て寝ている間に何者かによって仮面を被らされ、鍵を掛けられて――。
 
顔が分からない、体型も似ている人間が仮面だけで相手の区別を付けなければならないという異常な状況。被害者も本当に主人なのか不明だし。ここまで謎に満ちた本格ミステリはあまりない。未来の仮面にまつわる謎は大掛かりで楽しめたし、犯行は異常ながら全ての行動に筋道が立っていて見事だった。一見、本格ミステリとしてはタブーとされる真相が散見するが、それも緻密なロジックでクリアしている。というより設定の不気味さで突っ走ったというところか。視点がアルバイトの大学生・瞳子だったことも読みやすさの一因。全ての登場人物に役割があり、ミスリードに一役買っている。登場人物が仮面の名前で区別されるため若干ややこしいのだが、真相の方が混乱しそう。個人的にはとても面白かった、シリーズ内雰囲気ランキングをしたらかなり上位。