すべてが猫になる

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壁抜け男の謎  (ねこ3匹)

有栖川有栖著。角川文庫。

 

富豪の屋敷から名画が盗まれた。しかし屋敷内に作られた迷路の中に絵を残し、犯人だけが消失した!?(「壁抜け男の謎」) 小説家に監禁された評論家。かつては酷評していたが、最近は誉めていたのに。なぜこんなことを?(「屈辱のかたち」) 犯人当て小説から、敬愛する作家へのオマージュ、近未来小説、官能的な物語まで。色彩感豊かな「16」の物語が貴方を待つ。有栖川有栖の魅力を満載した、傑作作品集!(裏表紙引用)

 

有栖川さんの文庫新刊。有栖川さんの作品は文庫が出たら必ず買っているのだけど、ここんとこ短編集が多い気がする。そして最近「コレは!」っていう作品がないんだよなあ。これも短編集だということは分かっていたから火村ものだと思っていたら全然違ったし。別に「火村なら当たる」なんてことは口が裂けても言えないし、有栖川有栖を誉めてはいけないというルールもないんだけど。とにかく、こういうごった煮の短編集やショートショートをお書きになるんだと(しかもたくさん)いうことはわかった。
そして、どれもそれなりの水準の読み物にはなっているし(意味不明が1作あったが;;)決して一貫してつまらない作品集ではない。

 

でも、でも、やはり本領である本格ミステリ「壁抜け男の謎」が一番出来が良かったんだよねえ。これは私の好みの問題だけとは決して言えないと思う。SFやブラック系、鮎川パロディに金田一パロディ、果ては官能小説(しかもロリもの)まで詰め込まれていて退屈はしないが、有栖川さんが描かなくても、、という気持ちが起こらなくもないレベル。それぞれの解説を読ませていただくと色々と事情や思いはあったようだが、人気作家となると色んな仕事が来るんだね^^;

 

面白かったのはその表題作と、評論家が作家に変な恨みを買われる「屈辱のかたち」、言葉を間違って覚えていることから犯人が分かる「ざっくらばん」、「注文の多い料理店」を本屋の形でパロった「迷宮書房」あたりかな。
軽い気持ちでどうぞ。