すべてが猫になる

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天使の眠り  (ねこ3.7匹)

岸田るり子著。徳間文庫。

 

京都の医大に勤める秋沢宗一は、同僚の結婚披露宴で偶然、十三年前の恋人・亜木帆一二三に出会う。不思議なことに彼女は、未だ二十代の若さと美貌を持つ別人となっていた。昔の激しい恋情が甦った秋沢は、女の周辺を探るうち驚くべき事実を掴む。彼女を愛した男たちが、次々と謎の死を遂げていたのだ…。気鋭が放つ、サスペンス・ミステリー!(裏表紙引用)


初読みの作家さん。本屋でポップ付きで平積みになっていたというのもあるけど、この人何年も前から読んでみたいなーと思っていたんだよね。なぜかって?それはデビューがミステリ・フロンティアだからさ。


うむむ。13年ぶりに再会した女性が、名前、職業、家族構成は同じなのに20代の美貌を保ち表情や仕草も記憶と違い当時の面影すらない。勇気を出して接触した主人公は、話しながら「本当にこれは同じ人間なのか?」と煩悶し続け・・・。ていうか、絶対別人やろ。この悩める主人公と一二三の娘・江真視点との二重構成で、恋愛物語とミステリーの両方に同じ比重があるのが良いなと思った。設定上、もう少し専門的な要素の解決を見るのかと思いきや、複雑な人間模様が交差したゆえの犯罪ものに仕上がっているのも自分好み。また、ありがちな「やりすぎどんでん返し」もないゆえに非常にまとまりのある物語となっている。さまざまな立場の人間が登場するため、読み手によって共感を得る人物も分かれそう。読んだ者同士でいやあの男は情けないやれあの女はやりすぎだといった意見交換をし合うのも楽しみの一つとなりそうではないか。


文章については平易で読みやすいことを長所としてこの場では挙げる。読み手の引き出しにない言葉や表現をほぼ使っていない分、万人受けはしやすいと思う。深みについては平均的程度とだけ言っておく。個人的にはミステリとしても人間ドラマとしてもバランスが良く気に入った部類。アマゾンで見てみたけど、この作家さんの本たくさん出てるね^^。次はどれにしようかな。