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朝霧  (ねこ3.7匹)

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北村薫著。創元推理文庫

前作『六の宮の姫君』で着手した卒業論文を書き上げ、巣立ちの時を迎えたヒロインは、出版社の編集者として社会人生活のスタートを切る。新たな抒情詩を奏でていく中で、巡りあわせの妙に打たれ暫し呆然とする「私」。その様子に読み手は、従前の物語に織り込まれてきた糸の緊密さに陶然とする自分自身を見る想いがするだろう。幕切れの寥亮たる余韻は次作への橋を懸けずにはいない。(裏表紙引用)


北村さんの人気シリーズ、「円紫さんと私」もついに第5弾。
前作のあまりの芥川っぷりに調子を外したわたくし、この「朝霧」で見事立ち直ることが出来た^^まあ、多少の文学要素と落語ネタはもちろんあるのだけど。文学系トークが今回は自分にとって心地いいものが多い。逆に、今まで平気だった落語ネタに落ちの意味が掴めないものがあったりしたのが悔しい。

有名なリドルストーリー「女か虎か」が北村さんの文章で綴られていたり、素人の創作という設定の物語もあった(その先を「私」や円紫さんたちが創作するという流れなのだけど、これがまたうわっというぐらい良かった)。小ネタである「交換教授」の未読本ゲームの落ちが面白かったなあ。 別に普段リアルで誰かとこういう話がしたいとかではないのだけどね。


そしてそして、前作で出版社でアルバイトを始めた「私」もついに正社員。企画を任されたり本を作ったりと着実に成長している。落語好きと言ってもそこは普通の女の子、「恋」のきざしも見えちゃうのだ。

これ、続き出てませんよね?まだまだ読みたいなあ^^


(247P/読書所要時間2:00)