すべてが猫になる

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ギリシア棺の謎/The Greek Coffin Mystery  (ねこ3.8匹)

ニューヨークのどまんなかに残された古い墓地の地下室から発見された二つの死体。その謎を追うエラリーは、一度、二度、三度までも犯人に裏を掻かれて苦汁を嘗めるが、ついに四度目、あざやかに背負い投げをくわせる。大学を出て間もないエラリーが、四面楚歌の中で読者に先んじて勝利を得ることができるだろうか?クイーン最大の長編で、古今有数の名編であり、本邦初の完訳。(裏表紙引用)


ちょっと今回は手抜きとしてあらすじ引用版をお楽しみ下さい。いやあ、国名シリーズ最大長編、535ページは長旅でした。。改行もあまりない、字も小さいので普通の535ページとはワケが違うんだからね!昔「読み終わらない地獄」だったのって、オランダじゃなくて多分コッチだな。。


本作はファンにも人気の作品で、エラリーの失敗譚として、成長譚として、またまたすこぶる論理的なフーダニットミステリとして高い評価を受けている。大学を出たばかりで警察筋からもまだ信頼のないエラリーが、最後にはお父さんまで騙して凄い推理を見せちゃうんだから。本書はシリーズの中でも最も意外な犯人として知られており、お得意の消去法と心理証拠の追及が冴える。お茶の飲み残し、まだそこで引っ張るのか。。。現代のミステリ読者はたとえ犯人が路傍の石でも宇宙人でも驚かないという困った奴らなので、「発想のサプライズ」があるわけではない。注目して欲しいのは、論理の積み重ねによるただ1つの解答と他の可能性の排除だ。没個性で人間が書けていないと言われ続けた本格ミステリーの、動機に対する固執をとくと見よ。


(535P/読書所要時間7:00)