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ポップ1280/Pop.1280  (ねこ3.7匹)

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ジム・トンプスン著。扶桑社ミステリー文庫。

ポッツヴィル、人口1280。この田舎町の保安官ニックには、心配事が多すぎる。考えに考えた結果、自分にはどうすればいいか皆目見当がつかない、という結論を得た。口うるさい妻、うすばかのその弟、秘密の愛人、昔の婚約者、保安官選挙…だが、目下の問題は、町の売春宿の悪党どもだ。思いきった手を打って、今の地位を安泰なものにしなければならない―饒舌な語りと黒い哄笑、突如爆発する暴力!人間の底知れぬ闇をえぐり、読者を彼岸へとみちびく、究極のノワール。(裏表紙引用)


トンプスン3冊目。順番から行くと本当は評価の高い「おれの中の殺し屋」なのだが、タイトルがねえ^^;ていうか、それ本書のタイトルにしても合うんじゃないかというような内容だった。

さて、タイトルは「ポップ1280」。勝手に大衆的のポップかと思っていたら、population(人口)のポップだった。つまり「人口1280万の街、ポッツヴィル」を舞台にしているよというわけ。どういう物語かと言うと、「グリフターズ」と同じくそれほど大きな何かが起こるわけではない。主人公やキャラクターの心の闇や棘をまるでそれが普通であるかのように描いているのが特徴で、ともすれば無茶が格好良さに繋がるハードボイルドや、わかりやすく派手な狂気を描くケッチャム的ノワールに比べて地味で読者に選ばれ辛い作風であることは間違いないだろう。

物足りなさは「グリフターズ」と並ぶが、言葉選びのセンスや主人公の個性、読ませる展開の速さという点ではこちらの方が上だろう。ちょっとひねくれているが効果の確実性を重視した確信的な主人公の行動は、凶器を持って暴れる人物よりもある意味悪魔じみていて淡々と恐ろしい。不快さで言ったら似た作風のものは他にないな。これでこの面白さがなかったらただのゴミだ。

(338P/読書所要時間2:30)