すべてが猫になる

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ファンハウス/The Funhouse  (ねこ3.8匹)

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ディーン・R・クーンツ著。扶桑社ミステリー文庫。

ファンハウスのオーナー、コンラッドは、異形に生まれついた赤ん坊を溺愛していた。だが行く末を悲観した妻のエレンは、わが子を殺してしまう。怒り狂ったコンラッドは妻を叩き出し、復讐を誓う。いつの日にか、エレンにも俺と同じ苦しみを味わわせてやる--カーニバルで全国を回りながら、復讐の機会を待ち続けるコンラッド。そして、ついにその日が来た。再婚したエレンの娘エイミーが、何も知らずにカーニバルにやってきたのだ。復讐劇の幕が上がり、ファンハウスに悲鳴が渦巻く!クーンツの異色ホラーサスペンス。 (裏表紙引用)


久々のクーンツ、5番目に挑戦したのは1980年出版の映画ノベライゼーション。元のジャケットめちゃくちゃ怖いので見てみるといいよ。この扶桑社ミステリーは個人的にスティーヴン・キングで馴染みがある。「神々のワードプロセッサ」とか「ミルクマン」とか、あのあたりのB級ホラー路線が大好物ならこちらも楽しめること受けあい。出来の良さなんてこの際脇に置いちゃって、この笑っちゃうくらいのホラー定番のガジェットと、わざわざ自ら地雷を踏みに行く登場人物達のマンネリを楽しもうではないか。ていうか、そういうぐらいの気持ちじゃないとバカバカしくて壁本になる可能性を秘めているってこと。自分にとってクーンツの位置づけとは、「続けて読むとワンパターンで飽きるが、時々死ぬほど読みたくなる」作家なのだ。


それにしてもクーンツとは、雷鳴が好きな作家だなあ、と^^。「ライトニング」なんてモロそうだったし、こっそり読んだ「雷鳴の館」なんてものもある。そして本書も冒頭から雷鳴、雷光もろとも物凄く効果的に使われている作品なのだ。化け物を生んでしまった母親が、DVの夫に怯えながらその我が子を殺そうとしている場面で始まるという、なんとも恐ろしい物語。この赤ん坊の描写の気持ち悪さもさることながら、夫コンラッドの精神異常さもかなりキている。二代に渡ってコンラッドに呪われる恐怖が基盤にあるが、妻エレンの変貌ぶりが何よりもショックだった。一番気に入ったのはやはりファンハウス内での化け物との対決で、やはりノベライズだけあって映像が浮かぶ。おおこわ^^;

しかし、深みはまったくないので悪しからず。人間の恐怖とか高尚なもんじゃなくって、普通にそのまま
化け物の恐怖って感じ。自分はこういうのも好きなんです。ホラーに求める興奮、その沸点は低くていいと思ってる。それを超えるものは文学の領域にいるから。

(373P/読書所要時間2:30)