すべてが猫になる

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狙った獣/Beast in View  (ねこ3.7匹)

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マーガレット・ミラー著。創元推理文庫

ヘレンは怯えて台から電話を払い落とした。友人だというその女の声は、はじめ静かでほほえんでいた。だが、話すほどに悪意を剥き出しにし、最後にはこちらの死をほのめかす、予言めいた台詞を吐いたのだった。不安を断ち切れないヘレンは、亡父のもと相談役に助言を求めるが……。MWA最優秀長編賞に輝く衝撃のサスペンス。(あらすじ引用)


初・マーガレット・ミラー
読みたいと思っていたところ、あるお仲間さんのご厚意でお譲り頂いた。他の作品も何も知らないが、初挑戦するには適切すぎるほど適切な作品を選べたのではないだろうか。

特徴と言えばこの流れるような文章と洒落た無駄のない会話文で、洗練されたイメージ。それがこの不気味な心理サスペンスと見事に合致していて読みやすい。登場人物が極めて少ない物語の中で、信頼出来る人間が1人もおらず、追い詰められていく人物の心理が見事。ホラーというほど恐怖は煽らないが、静かな中それでもスリルは満点。おそらく今の時代、多くの読者がこの仕掛けに途中で気付くのだろうが、自分は油断していて予測していなかった。いや、驚きました。


女流サスペンス御三家の1人だそうだが、やはり作家によって作風はさまざまだ。本書だけに限って言えばこちらはかなり自分好み。近いところで言うと、ウィリアム・アイリッシュやルース・レンデルあたりがお好きな人向きかも。

(281P/読書所要時間2:00)