すべてが猫になる

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12番目のカード/The Twelfth Card  (ねこ3.8匹)

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ジェフリー・ディーヴァー著。文春文庫。

ハーレムの高校に通う16歳のジェニーヴァが、博物館で何者かに襲われそうになるが、機転をきかせて難を逃れる。現場にはレイプのための道具に、1枚のタロットカードが残されていた…。単純な強姦未遂事件と思い捜査を始めたライムとサックスだったが、その後も執拗に少女を付け狙う犯人に、何か別の動機があることに気づく。(上巻裏表紙引用)


リンカーン・ライムシリーズ第6弾。

今回も早々から犯人視点とライムチーム視点で構成されているが、本事件では主犯格の男と殺し屋、複数犯人による心理とエピソードが交差して行く形。さらに、事件の重要なキーになっている140年前の奴隷解放運動による記録が挿入され、充実した内容。
前回の「魔術師」に比べ、今回の犯人はわりとどんくさい。タイトルとなっている「12番目のカード」にあたる「吊るされた男」ですらそれほどインパクトのある動機がなかったかも。しかし、ディーヴァーの用意した仕掛けは今回も多くの読者を騙し続けることになる。どんでん返しが当たり前となったライム作品だが、そちらもファンの期待通りと言って遜色はない。

シリーズの特色であるキャラクターの動きについては、今回かなり動揺させられた。目の前で銃殺された男の死に様が目に焼きついてしまったロン・セリットー。いつも陽気な彼が見せる刑事らしからぬ弱さには涙を誘われる。そして仲間と共に、自身の力で乗り越えていく姿に目頭が熱くならないファンは居ないだろう。サックスも毎度ながら何度も命の危機にさらされるが、今回こそはもうダメかと思った。そして今回、ジェニーヴァの保護をしたローランド・ベル。彼のスマートな働きと揺るぎない意志を見て、また1人お気に入りのキャラクターが増えた。前回登場したカーラとの再会も嬉しい^^。

そして、事件を言い訳にして手術を回避し続けるライム。懸命なリハビリと、その先にあるとは限らない
明るい未来に対する諦観。そしてそれを最愛のパートナーと分かち合う最高の瞬間にまた立ち会えた。


さて、次が大傑作らしいので楽しみだ。文庫化はまだかね。でもこれでやっと評判の「悪魔の涙」が買える^^

(801P/読書所要時間6:30)