すべてが猫になる

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転落  (ねこ3.3匹)

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永嶋恵美著。講談社文庫。

ホームレスになってしまった「ボク」は、食料を探していた神社で、小学生の麻由から弁当を手渡される。巧妙な「餌付け」の結果生まれた共犯関係は、運命を加速度的に転落へと向かわせる。見せ掛けの善意に隠された嫉妬・嘲笑・打算が醜くこぼれ落ちるとき、人は自分を守れるのか!?驚愕の心理サスペンス。 (裏表紙引用)


これはちょっとなんぼなんでも内容が薄すぎないかぃ。

タイトル通り、一般の30代女性が人生を「転落」して行くお話なのかと思ったら、普通じゃないちょっとおかしい女性が自ら人生の選択を誤って行くお話だった。

そもそも、構成が悪く人物の描き分けが中途半端でわかり辛い。第二章からの語り手が不愉快とも言い切れない悪人になりきれない人物像。登場人物が転落して行くさまのほうを面白く描きたかったのなら、第一章のエピソードは不要だった。語り手の心理も意味不明だが、それを考えさせられるまでの領域に引き上げるには圧倒的に描き込み不足だろう。こういう社会のひずみを、人間の心の闇を、最初から「読者が了解」しているという前提で描くにはあと1つ何か足りないんじゃないか。

普通に最後まで読ませるだけの力は間違いなくあるのだから、模倣ではなく本当に書き手が思っている事、伝えたい事を形にして欲しい。


(332P/読書所要時間2:30)