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思考機械の事件簿 III/The Casebook of the Thinking Machine Vol.III  (ねこ3.6匹)

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ジャック・フットレル著。創元推理文庫

仮装舞踏会の夜、貴重な金の皿が紛失した。仮装姿のまま逃走した犯人たちの身元は杳として知れない。新聞記者ハッチは、独自の調査で大学の同窓生にたどりつく。だが友人は肝心なことには何一つ答えようとしない。彼はこの盗難事件の犯人なのか? 《思考機械》初の、そして唯一の長編『金の皿盗難事件』をはじめ、6編の短編を収録した。(あらすじ引用)


この<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>シリーズはあまり読んでいない。ピーター卿とサム先生くらい。そういうわけでこの思考機械ものも、実は1も2も読んでいない。まあこういう短編傑作集みたいなものは原書と収録順も違うしあまり気にするこたあない(だろう)。

というわけで、1907年からスタートしたというこってこての古典を読み始めるわたくし。



・・・・・・古すぎるわ!!!!!!!(笑)

電話を駆使する探偵が最先端の時代ということで、○○術だの夢○病だの「論理的に目を見てわかりました」的なものが続く。この調子だと双子や糸と針トリックや犬が吠えなかったパターンも出るぞ、とにやけながらどんどん読み進める。そして原書から引っ張ってきたとおぼしき挿絵が雰囲気最高。思考機械さんはなかなか恐いご風貌のようで^^;イカれた科学者と聞いて我々が真っ先に連想するタイプそのままで笑えるのだ。
この思考機械さんがどういう方かと言うと、哲学博士、法学博士、王立学会員、医学博士、その他の肩書きをお持ちだそうだ。本名オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン。論理の必然性は不可避であり、事件の構成要素を適切に配置すれば筋の通った解答が自ずから現れてくると彼は語る。
時には天文学、地理学的計算を用いて暗号を解読する推理の最高権威だ。彼の推理はスマートでキレがあり、時には飛躍もするが解決としてはいつも正しい。

それほど肩肘張らずに読めるのが好印象。現代向きではないのは当たり前だが、ここまで行くとファンタジーの域まで自分を吊り上げて読むのが良し。古典的、初歩的トリックでありながらミステリをこれから読もうという人にはなぜだか向かない。ミステリをどこまでも極めよう、という人や古典好きが「こういうのもいいよな」感覚でひっそり楽しむものじゃないか。

最後に。以前収録されていた短編の続きなんかも入っているので、やっぱり順番に読んだ方がいい(どないやねん)。さて、1と2はどこに行けば売ってるかね^^;

(319P/読書所要時間2:30)