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笑う警官  (ねこ3.5匹)

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佐々木譲著。ハルキ文庫。

札幌市内のアパートで、女性の変死体が発見された。遺体の女性は北海道警察本部生活安全部の水村朝美巡査と判明。容疑者となった交際相手は、同じ本部に所属する津久井巡査部長だった。やがて津久井に対する射殺命令がでてしまう。捜査から外された所轄署の佐伯警部補は、かつて、おとり捜査で組んだことのある津久井の潔白を証明するために有志たちとともに、極秘裡に捜査を始めたのだったが…。北海道道警を舞台に描く警察小説の金字塔、「うたう警官」の文庫化。 (裏表紙引用)


久々に読む佐々木さん。割と前に買っていたのだが、10ページくらい読んでほっぽり出していたきりだった。普段警察ものを読まないから、気分が乗れない時はだめね。


さて、本書も北海道警察が舞台。「制服捜査」の田舎臭さと人情味を思い出させてはくれなかったが、人事異動の異常さと道警の不祥事という設定は生きたまま。今回は佐伯という警部補が主人公となっており、部下の植村や新宮、婦人警官の小島百合が、覚せい剤所持や婦人警官殺害容疑で射殺命令が出ている津久井の潔白を証明するために奔走する。犯罪そのものではなく、明らかに警官を描いた物語となっているため、個々の魅力があまり引き出せていないのは致命的だ。津久井に対する信頼ですら、こちらにはただ盲目的に情の部分のみであるようにしか見えない。また、事件の真相そのものが意外に人間臭くて情けない。この人物が・・・というのが着眼点なのであろうが。被害者の人物造形もあまりリアリティがなく、手を抜かれた印象。ドラマ性が薄く、掘り下げ感もなく、これと言って他と違う長所を見出せなかったが、さくさくと読みやすくそれなりに楽しくは読めるだろう。


ただ、タイトルは元の「うたう警官」の方がインパクトもあるし意味も内容と合致していて良かったのではないか。これだと超有名海外作品とかぶるし(あとがきを読むと故意的だそうだが逆効果では。間違って手に取る人はいないだろうが。。)。

(439P/読書所要時間3:00)