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裏窓/Somebody on the Phone  (ねこ3.8匹)

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ウィリアム・アイリッシュ著。創元推理文庫

戦後のわが国に紹介されたミステリ作家のなかで、もっとも広く歓迎されたサスペンス・スリラーの第一人者ウィリアム・アイリッシュの傑作の粋を集めた待望の短編集。大都会のなかの人間の孤独、しのびよる死の影の戦慄、絶望と焦燥にさいなまれる犠牲者等、常に意表をつく技巧と主題の多様性に加えて、作者の独壇場ともいうべき哀切な雰囲気描写と緊迫したサスペンスは永遠に読者を魅了せずにはおかない強烈な磁力を秘めている。本巻には、ヒチコックの映画でもおなじみの名作「裏窓」をはじめ、「死体をかつぐ若者」「踊り子探偵」「殺しの翌朝」、ファンタジー「いつかきた道」、卓越したアイディアとサスペンスに富むストーリー「じっと見ている目」「帽子」傑作ショート・ショートの「だれかが電話をかけている」、そしてアイリッシュには珍しい密室ものの中編「ただならぬ部屋」の9編。(紹介文引用)


初めて読むアイリッシュ短編集。何年前にどこで買ったか忘れたが引っ張り出して来た。若干期待しすぎていた感があったのと、ホラー寄りのものを想像していたのでちょっとテンションは低め。でも本当は字の小ささに苦戦しました、ご了承下さい。


「裏窓」
ヒッチコック映画で有名すぎる作品。だが、恥ずかしながら自分は観た事がない。題名だけはさすがに知っていたのでわくわくしながら読む。車椅子の主人公がいい雰囲気を出している。はっきり言って主人公のやっていることはただののぞきなのだが、そういう禁断の行為がなおさら人間の欲をそそる。サスペンスタッチでドキドキしたが、意外と普通だと思った。

「死体をかつぐ若者」
父親が殺した二度目の妻。息子は、父を救うために死体を移動させようとするが。。
邪魔者が多すぎて笑える^^;父親は自首したがってるんだよね。そこが凝っている感じ。皮肉な終わり方。これでベストの結果だったのかな?二人にとって。

「踊り子探偵」
踊り子の親友が殺人鬼に殺された。踊り子は体を張って犯人を捕まえようとするが。。
主人公が踊り子というところが特色であるが、基本スタンダードなミステリ。強い女性はいいね。

「殺しの翌朝」
あっさりと見つかる凶器、くっきりした足跡。。。妙な犯罪の発生に、刑事は。。
こういうのは好き。意外性があるし心理描写を楽しめる。

「いつかきた道」
少年にとっての英雄は、曽祖父の弟である軍人だった。少年は彼の功績をなぞろうと旅に出るが。。
ロマンスが楽しめる作品。何かを守ろうとする男はいつだってかっこいいのだ。

「じっと見ている目」
全身麻痺の老婆は、嫁とその愛人に最愛の息子を殺された。やがて結婚した二人に天罰を下したいが、話すことも動くことも出来ない。。
一番好きな作品がこれかな。ミステリとしても楽しめるし、老婆とある青年との意志の疎通のくだりがぐっと来る。

「帽子」
自分の帽子を誰かに間違って持って帰られてしまった男は、代わりに残されていた帽子をかぶって帰るが。。
主人公、かわいそう^^;;大きな犯罪に巻き込まれてあたふたする緊迫感が凄い。ミステリとしては古さが際立つが。

「だれかが電話をかけている」
妹が誰かに脅迫されているらしい。一本の電話から疑惑を持ち始めた男は。。
短いお話だが、オチにキレがあって恐怖感もあってなかなか。原題はコレかな。

「ただならぬ部屋」
中編ミステリ。密室もの。ホテルの決まった部屋で3人もの男が飛び降り自殺をするという。。
図解があって本格的。ある意味「そんなばかな」系ではあるが、心理的に読むとかなり面白い仕掛け。
動機や犯人像もなかなか見られないタイプのもので良かった。


以上。
古さは否めないなあ。古き良きの部分ばかりではない。が、共通しているのは、どんな境遇であれ最終的には人生や人間を肯定しているところ。話の終わらせ方がドラマティックだったり一癖あったりと、1つ1つの作品に「引き締まり」がある。もう1冊短編集持っているので楽しみにしよう。


(381P/読書所要時間4:30)