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999 -狂犬の夏/999 The Last Book of Supernatural Horror and Suspense (Vol.3)  (ねこ3.8匹)

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アル・サラントニオ編。創元推理文庫

田舎町に起きた連続猟奇殺人の顛末を、少年の目を通して描くランズデールの表題作。幽霊屋敷をなんとか売り物にしようと策を巡らす不動産業者ら一行を待ち受ける意外な運命を物語るブラッティの長編『別天地館』。加えてストーカー賞作家モンテルオーニ、怪奇の詩人リゴッティらの世にも奇妙な4つの物語を収録。ホラーを愛するすべての人に贈る一大アンソロジー、ここに完結。 (裏表紙引用)


原題なげぇよ^^;
というわけで、beckさんお薦めのホラー・アンソロジー。ランズデール入門にも最適ということで。先日読んだハヤカワ文庫のホラー・アンソロジー「闇の展覧会」解説でも、優れた叢書として特に本書が紹介されており。ゆきあやの知らない作家さんが盛りだくさん。

さて、各感想を。

「狂犬の夏」 ジョー・R・ランズデール
ボトムズ』の短編バージョンということらしい。長編のあらすじを読んだ時はキツそうだなあと思っていたが、読んでみると相当好みの作品だった。兄と妹が、死に掛けた愛犬と共に森に入って黒人女性の惨殺死体を発見するという。。噂の「山羊男」がいい味出してる。これ、子供視点だから余計怖いんだと思う。妹を守ろうとする兄や床屋を営む父親、従業員の青年などなど、閉塞的な環境の中得体の知れないものに命を狙われる恐怖や、人々の差別、盲目的な恐怖の対象など、良い感じで描かれているね。ラストの意外性もさすが。これ、長編になったらどうなるの?これでしっかりまとまっている気がするんだけども。

「影と闇」 トマス・リゴッティ
すいません、わけがわからなかった^^;;;;
芸術家のもとに集まった人々が旅をしているわけなんだけど、形而上学的なんとかの話ばっかりでいまいちワタクシには^^;;好きな人も居るんだろうけど、自分がこういう作風を気に入る日は一生来ない気がする。。エドガー・アラン・ポー全集とかに入ってそうな^^;

「ヘモファージ」 スティーヴン・スプライル
警官が吸血鬼!?というお話で、短いのだけどなかなか楽しめる一品。怖いねえ。血のつながりと、吸血鬼であるがための哀しい宿命が読み取れる。

「リハーサル」 トマス・F・モンテルオーニ
一番ダントツに気に入った作品。
劇場の掃除人兼警備員をしている男が、自分の半生を振り返る。舞台に出てきたのは、死んだはずの父親と会えなくなった母親、そして少年時代の自分だった。。。
「こうであったなら」を具現化した作品で、シナリオ調になっているのも効果的。ラストはどうにでも解釈出来るのかな。夢だったのかリセットしたのか。こういう作品は誰でも面白く読めると思う。

「闇」 デニス・L・マッカーナン
これもかない短いお話。莫大な遺産と屋敷を手に入れた男。亡くなった叔父が好んだというまばゆいばかりのライト。男を狂わせたのは光か闇か。ラストもよく出来てる。

「別天地館」 ウィリアム・ピーター・ブラッディ
ようやく読んだ事のある作家さんが。。「エクソシスト」の人だね。
なんと200ページほどの中編。自分にとってのこういうアンソロジーのお約束は、長いものほど好みじゃないタイプのものだったりするのだけど。。これはなかなか面白かった。幽霊屋敷ものとしてはあまり見ない性質の仕掛け、、、ではないのだけど、これでこのオチが来るとは予想していなかった。人物造形もしっかりしていて読み分けしやすい。


以上。
ランズデールとモンテルオーニが大変気に入りました。その2つだけだと4匹越えていたでしょう。この叢書、あと2つも読みたいのだが。。こういうジャンル(オカルト)は自分の好みがはっきりしてしまうのでちょっと腰が引けるかも。


(459P/読書所要時間4:00)